リリー・フランキーが語る「独身 60歳の生き方」「社会とちょっと線を引くようになりました」
「FRIDAYとか文春のこと好きな人なんていないでしょ(笑)。僕は昔、FRIDAYの編集長と時々飲んでたんですけど、その時の乱れた姿は僕のカメラに収めてあります。いつでもデカい看板借りて出せるようにしてあるんで(笑)」 【画像】"還暦特別インタビュー"で魅せた 大人の色気漂う「リリー・フランキー」 FRIDAYとの思い出を、こう語ったリリー・フランキー(60)。昨年は映画6本に配信シリーズ1本が公開されるなど、俳優業は好調だ。3月公開の主演映画『コットンテール』では、妻の死を受け入れられぬまま、遺言に残された願いを果たすためにイギリスに向かう初老の男を演じている。いわゆる″イケオジ″な本人のイメージとは正反対のキャラクターに思えるが、そうでもないらしい。 「主人公は仕事もパッとしないまま歳(とし)を取ったくせに、息子には『家族を顧みなかったのは、忙しかったから』と詭弁(きべん)を言う。これって世界中のオジさんたちが持っている感覚だと思いますね。だから親近感はありましたよ。少し違うのは、彼は妻を通じて社会と繋(つな)がってましたけど、僕なんか妻子もいない典型的な独居老人ということくらい。何も用がなかったら全然家から出ないですから」 昨年11月に還暦を迎えたリリー。30年以上にわたり第一線で活躍し、華々しい生活を送っているように思えるが、数年前から人生観にも変化が起きているという。 「映画の主人公と同じく、僕もだんだんと社会と繋がりたいとも思わなくなっているんですよね。たとえば最近、メディアを見るだけでも独特の息苦しさを感じるというか。社会の規範とかルールみたいなものを、そのメディアごとに押し付けてくるように感じませんか。若いときはそういうものに反発する気持ちがありましたけど、さすがに歳を取ってそうもいかなくなってきた。だから、社会とちょっと線を引くようになってきたんです。世の中のオジさん、オバさんも悩んでいることだと思います。苦しいときは繋がりを切ればいいんです」 飄々(ひょうひょう)としたリリーのキャラクターの裏には、どこに属さなくても生きていけるという達観にも似た境地があったのかもしれない。その考えの変化は、仕事観にも影響を与えている。 「なんだろうな。なんか確固たる思いでやっているわけじゃないし。僕の中で、仕事ってコミュニケーションの場なんです。普段の生活だと面倒くさいと思う人とのやりとりが、映画を撮影するモノづくりの行為の一環だと全然ストレスじゃない。いろんなところからキャストやスタッフが集まって、ただただ『すごい才能だなあ』って感心しちゃう。そこは昔から変わんないのかもしれない」 働き方にも変化は出てきた。 「最近、夜遅くまで起きていられなくなって(笑)。書く仕事も、昔は夜中から書き始めて朝方に書き上げるようにしてたけど、今は無理。健康にも気を遣うようになりました。ドラマの撮影現場では共演した斎藤くん(工・42)と、腸活のことをずーっと話してましたもんね」 仕事論を深掘りしていると、翻(ひるがえ)って週刊誌にこんな言葉も残してくれた。 「僕は、いつも行く散髪屋で女性誌を読むのが楽しみだったんだけど、最近、雑誌の代わりに電子タブレットを置くようになったんです。自分で検索するんじゃなく、雑誌だからできた『知らないうちに、これ知っちゃったな』っていう経験が好きだったから残念でした。新幹線に乗るときはFRIDAYや他の週刊誌も買ってたんですよ。でも、最近は品川駅で雑誌を売っていたキオスクがなくなっちゃった。自分の好きな雑誌の存在感が減っていくのは、少し寂しいよね」 「耳順(じじゅん)」を迎え、他人の声だけでなく自分の感覚を大切に活動を続けるリリー。これからもマイペースに歩み続ける。 『FRIDAY』2024年3月15日号より 取材・文:フリーライター 渥美志保
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