「終りに見た街」吉田羊インタビュー「本当に恐ろしい時代だったのだなと」
――ひかりを演じられ、今どのような思いを抱いていますか? 「これまで資料や授業などで戦争について学んできてはいますが、今回演じてみて、お芝居と分かっていても怖さを感じました。なので、当時の人々がこれをリアルに体験していたのかと思うと、どれだけ絶望的な気持ちで日々を生きていたのだろう…と。本当に恐ろしい時代だったのだなとあらためて感じました。ドラマの中では義理のお母さんが家族の中で唯一の戦争体験者で、彼女のあるアイテムによってわれわれは戦禍をくぐり抜けることになるのですが、家族の中に体験者が一人いるだけで身近なこととして戦争を感じるきっかけになるのかなと思って。実際、三田さんのセリフ一つ一つにすごく説得力がありましたし、三田さんのたたずまいに学ぶところが本当にたくさんありました」
――劇中では、次第に家族の中で戦争に対する価値観にずれが生じていくさまが描かれます。 「当初、子どもたちは戦争をどこか非現実的な虚構の世界のように捉えているようなところからどんどん戦争に感化されていくことになりますが、経験が少なく純粋な子どもだからこそ、良くも悪くも影響されやすいと思うんです。だからこそ、この現実でも大人たちが子どもに恥じることのないように正しく導いていく覚悟が必要だなと。そして今回、子どもたちが現状を受け入れていく過程、そのグラデーションを監督がすごく丁寧に作っていらっしゃって、本当に細かく繊細に彼らの気持ちの変化を演出されていたのがとても印象的でしたね。さらにはそれを受ける子どもたちのお芝居も現場でどんどん変わっていって、そのさまは俳優としてとても勉強になりました」
――どのような方にこの作品を届けたいですか? 「特にこの先日本を支えていくであろう、若い世代の皆さんに見ていただけたらいいなと思っています。世界で戦争が起きている今、時代は違うけれど戦時下というのはどういう状況なのか、そして戦争によって人間がどう変わっていくのか、はたまた変えられてしまうのかということを、このドラマをきっかけにもう一度考えていただけたらうれしいです。また、戦争ドラマというとどこかシリアスで重たいイメージがあると思いますが、このドラマは宮藤さんならではのユーモアがところどころにちりばめられていて、戦争を全く知らない世代の皆さんにも、より身近に自分事として捉えていただけるような物語になっています。ぜひご家族全員皆さんで一緒にドラマを楽しんでいただいて、見終わった後は戦争について話す時間が生まれるような、そんな作品になったらいいなと思っています」