インテル、生成AIスタートアップ「Articul8」をスピンオフ、狙う市場とその詳細
「Articul8」スピンオフによってインテルが目指すもの
Articul8はインテルからスピンオフした独立企業だが、インテルは同社と戦略的に連携し続けることを示しており、インテルはArticul8のエンタープライズ向けAIソフトウェアを社内ユースケースに活用するだけでなく、 Articul8社とインテル社の共同市場開拓パートナーシップの一環として、エンドユーザーにも提供する予定だと広報担当者は述べている。 これによって、拡大する生成AIマーケットで存在感を示すとともに、インテルのコンピューティング製品の販売をサポートしていくというところに、ゴールが置かれているようだ。
Articul8スピンオフはインテルの立て直し計画の一環でもある
ロイター通信の報道は、インテルがArticul8を立ち上げた今回の動きは、同社の事業部門に外部資本を求める動きにおける最新の取り組みであると指摘している。 今回のスピンアウトは、インテル史上最年少の32歳でバイスプレジデント、初代CTOに就任したものの、2009年に退社し、そして2021年に再びインテルにCEOとして返り咲いた著名なインテルCEOパット・ゲルシンガー氏による、インテル社の立て直し計画に資金を調達する戦略の一環であるとされている。 インテルにとって、PCチップ市場が低迷している上に、「半導体=NVIDIA(エヌビディア)」とも言われるほど、AIコンピューティングに強みのあるNVIDIA社の優位性格が示されるためだ。 その戦略の中で、Articul8はNVIDIAやAMDなどの競合他社に対抗し、インテルのハードウェアをより魅力的なものとする使命を担っている。
Articul8 AIの生成AIが目指す市場
Articul8は、ChatGPTメーカーのOpenAI、グーグル、Stability AI、Anthropicなど、生成AI市場における競合に対抗するため、AIを活用したエンタープライズソフトウェア市場でより大きな動きを起こすことを目指している。 企業が生成AIの活用に二の足を踏む理由のひとつがセキュリティ面での懸念だが、Articul8は、自社のAIシステムをBCGのデータセンター内で展開することで、より堅強なセキュリティを実現。 機密データを生成AIを扱う外部企業に委ねることに不安を示す企業に対して、特に金融サービス、航空宇宙、半導体、電気通信など、高度なセキュリティと専門的な領域知識を必要とする分野の顧客企業に、魅力的なソリューションを提供している。
Articul8は企業の生成AI活用に新たな選択肢を示せるか
昨年にはマイクロソフトが約数千億円の投資を行うなど生成AIへの投資は盛り上がっており、2024年にはさらに増加すると予想されている。企業においても生成AIの業務への導入に対する関心と需要は高まっているが、セキュリティやコストなど様々な懸念を抱えている企業も少なくないだろう。 企業向け生成AIソリューション市場には、OpenAI、マイクロソフト、アマゾン、グーグルといった有名企業、また数多くのスタートアップが参入しており、それぞれが独自の機能を提供している。この過熱する競争で、Articul8がどのように差別化を図り、企業による生成AIの活用をサポートできるのか、続報に期待が集まっている。
文:大津陽子 /編集:岡徳之(Livit)