「公職選挙法や放送法には『報道をこうしろ』なんて書いてない」西田亮介氏と考える「兵庫県知事選」と「選挙報道のあり方」
兵庫県知事選で再選した斎藤元彦知事。SNSが盛り上がりを見せる一方で「メディアは偏向報道をしている」「“真実”を放送しない」などの声が聞かれた。 【映像】斎藤知事のSNS戦略の“肝”が一目でわかるグラフ 果たして今回の知事選において本当にメディアは“敗北”したのか? 選挙報道はどうあるべきなのか? 日本大学危機管理学部教授/東京科学大学特任教授の西田亮介氏に聞いた。 知事選において一部ネットでは以下のような主張が見られた。 「元幹部職員の死亡は自身のプライベートの問題が暴露されることを嫌がったことであり、斎藤知事のパワハラとは関係ない。これをマスコミは隠した」 この点について西田氏は「この手の言説が大量流通している印象はあったが、重要なことは『何もわからない』ということだ。パワハラがあったのかなかったのか、(元幹部職員が)プライベートな問題が暴露されることを嫌がったのか否かも含めて、司法は何ら判断をしておらず、百条委員会は止まっていたままだ。“元幹部職員の文章は公益通報に当たるのか”についても同様で確定していない」と指摘。
公職選挙法は「評論の自由」を強調してさえいる
さらに西田氏は従来メディアの選挙報道の現状や問題点について以下のように述べた。 「多くの人たちが選挙報道について疑問を持っていると思うが、同時に『ほとんど見たり読んだりしないままに言っている』のではないか。それだけマスメディアの影響力が損なわれている。1世帯あたりの新聞購読部数が去年初めて0.5を割り、テレビの試聴時間は特に若い世代で減っている。その分増えているのがインターネット・動画だ」 「(テレビが選挙において視聴者が求める内容を届けられていないのは)公職選挙法と放送法の影響を受けているからだ、と言われているが、実際には公職選挙法や放送法には『報道をこうしろ』なんて書いてない。むしろ公職選挙法は『評論の自由』を強調してさえいる。だが、テレビを制作する人は“面倒くさいこと”は避けたいので同じように尺を揃えたり、抑制的な報道にするなどと甘んじてきた。そのツケが今回きている印象はある」 「世界中で報道の表現をアップデートする動きが強まっており、日本でももっと試行錯誤するべきだ。局の様々な事情があるのだろうが、地上波ももっとネットに流すことに対して注力していかないと、埋没してしまうのはやむを得ない。ネットの情報流通量は大変多いため、そこに対抗していかなくてはならない」 (『ABEMAヒルズ』より)
ABEMA TIMES編集部