何を言われようが、紅白でなければ見られないものが高視聴率のカギを握る
紅白歌合戦の取材が29日から始まった。個人的には、途中、何年か抜けたが、2005年から取材している。12年経って思うのは、取材するメディアの数が増えたことだ。筆者が取材を始めたときはネットメディアに紅白取材が解禁された頃合いで、当時すでに「取材するメディアの数が増えた」といわれていた。筆者も当時仕事をしていたネットメディアで勝手がわからないまま手探りで取材に入ったのだが、そのときと比べても明らかに多い。そのぶん、取材現場にも一層の熱気を感じた。今年の紅白への期待が高まる。
ピーク時と比べると、視聴率は下がっているが、それでも40%台
国民的番組といわれた紅白歌合戦は、1984年の第35回、都はるみの感動のラストステージとなった年に78.1%の視聴率を記録して以降は、森昌子が司会と紅組トリをつとめた翌年の第36回が66.0%、以後は60%を割ってしまうが、近年も40%前後を維持している。視聴形態の多様化と視聴者のテレビ接触時間が減少傾向にあるなかで、それでも40%前後をキープしているのだから、いまなお国民的テレビ番組と言っていいのではないかと思う。NHKが近年、多数のメディアに取材の門戸を開くのも、できるだけ多くの人に紅白の魅力や見どころを伝えたいからだろう。 紅白の注目度を高めるには、紅白でしか見ることのできないものを提供することに尽きる。このところ毎年のように、サプライズのゲストや演出が話題となる。今回は、安室奈美恵が最大の注目を集めている。安室は特別企画枠の登場で、紅組のトリをつとめる石川さゆりの前に出演することになった。安室のあと、桑田佳祐がやはり特別出演。ともに時間的には23時台の登場となる。安室の歌唱曲はリオデジャネイロオリンピック・パラリンピック放送テーマソングとしておなじみの「Hero」。生出演ではあるがNHKホールではなく、ほかの場所での歌唱を中継するという。
NHKでなければできないこととは?
29日は各歌手(すべてではない)の音合わせや報道陣向けにフォトセッション、囲み取材が行われた。もちろんそこに安室や桑田が出てくることはないのだが、それでもメディアの熱気の高まりはやはり紅白ならではのものだった。あらためて紅白が、これだけの期待を抱かせてくれる番組なのだということを再認識させてくれるに十分だった。 そんな中で、NHKらしいというかNHKでしかできないことのひとつとして、松たか子の歌が注目を集めていた(一部報道によると、この歌唱中に2階席で女性スタッフにクレーンカメラがぶつかるハプニングが発生していたが、1階席からは気づくことができなかった)。松が歌手として紅白に出演するのは、1999年に「夢のしずく」を歌って以来じつに18年ぶり3回目。今回は自ら作詞・作曲を手がけた朝ドラ『わろてんか』の主題歌「明日はどこから」での出場だが、バックスクリーンにドラマの印象的な場面が流れる演出があった。残念ながら松の音合わせは撮影NGだったので写真をお届けすることはできないが、本番でも同様の演出であれば、全国にいる朝ドラファンにとっては松の歌唱とあわせ、今年一年を思い出しながらまったりできる”国民的ひととき”となりそうだ。 (取材・文・撮影:志和浩司)