シガー・ロスが語る日本との絆、オーケストラ公演の全容、希望とメランコリーの30年
結成30周年の絆、日本との信頼関係
―さて、今年はシガー・ロスの誕生30周年ですよね。結成メンバーであるあなたとヨンシーがこれだけ長くクリエイティブなパートナーでいられた理由は、どこにあると感じますか? ゲオルグ:それはいい質問だ。僕らふたりはとにかく昔からお互いを敬い、理解し合えていたんだよね。家族同然だし(笑)、色んなことを共に体験してきた。だからその理由は、究極的には相手に抱く愛情であり、敬意であり、お互いに全く異なる人間で、考え方も違うってことをちゃんと理解しているという点も、重要なんだと思う。それでいて美的感覚が一致しているんだ。音楽的にも、何をもって美しいとするのか、基準を共有している。もちろん常に意見が一致するわけじゃないよ。例えば、曲の出来の良し悪しだったり、その曲を完成したと判断するのか、まだ手を加えるべきだと感じるのか、意見が分かれることは多々ある(笑)。だからと言って自分の意見に固執したりはしない。僕が常に正しいわけじゃないからね。意見が分かれるのは当然で、自分たちがやるべきことは何なのか、必ず全員が同意できるんだよ。 ―オーケストラル・ツアーは来年10月までの日程が発表されていますね。その後の動きについて、バンド内で何か話していることがありますか? ゲオルグ:うん。新たな曲作りをしたいなと思ってる。実はツアーをしながら、折を見てスタジオで作業をしようと試みてはみたんだけど、うまく行かなくてね。30年活動していれば、ツアーと曲作りを並行して進めるのは僕らには向いていないと分かっているはずなんだ。やるたびに失敗してきたから(笑)。でも、スタジオに入って何が生まれるのか見届けたいという意欲があって、「こんなことをやりたいな」というぼんやりとしたアイデアもある。コンセプトみたいなものが徐々に形成されつつあるように思うし、それが作品に発展するとは限らないけど、何らかのきっかけさえあれば充分なんだよ。だからスタジオに戻って、曲を作って、願わくば次のアルバムを完成させたい。それだけのエネルギーが僕らにはあると思っていて、ここにきて忍耐力を身に付けられた気がするんだ。まあ、年を取ったってことなんだろうけど(笑)、忍耐力があって、お互いを理解していて、今の僕らはバンドとしてこのままずっと活動を続けるために必要なものを、全て手に入れられたんじゃないかな。 その一方で、結成から30年が経って、年も取った今、「お前はザ・ローリング・ストーンズになりたいのかい?」と疑問がよぎったりしないわけじゃない。自分たちをストーンズと比較するのもおこがましいけど(笑)、分かるよね? でもここにきて、自分たちは人生の選択をしたんだと悟った。それを尊重して活動を続けるべきなんだと思っているよ。シガー・ロスを結成した時に僕らは、楽しめている間は続けようって話していたものだけど、今も相変わらず楽しめていると明言できるし、バンドとしてすごくいい場所にいると思うんだ。 ―じゃあ、今度は10年待たせないで下さいね。 ゲオルグ:僕らも、そうならないよう願ってるよ(笑)。 ―最後に、来日公演を楽しみにしているファンに、何か伝えたいことはありますか? ゲオルグ:そうだな……多分、観に来てくれるどの人より僕らのほうが、また日本に行けることを楽しみにしているんじゃないかと思うよ(笑)。少なくとも、僕はものすごく楽しみにしている。一番好きな国のひとつだし、家族を連れて1週間くらい早く行けないか、可能性を探っているところなんだ。それに、日本でライブを披露できるのは、僕らにとって喜びでしかない。日本では、会場にいる人たち全員の意識がこちらに集中していると実感できる。そこにいることを全員が心から望んでいるというか、言葉で説明するのはすごく難しいけど、僕が思うに、ほかの国々でプレイするのとは違う。ライブが観たくてそこにいるのは、全体の85%程度っていう国も少なくないし、残りの15%は、チケットをたまたまタダでもらって来たみたいなノリで(笑)。でも日本はそうじゃない。本当に美しい時間を過ごすことができる。全員がその体験を僕らと分かち合っているように感じられて、ひとつになれるんだ。だから、小さなクラブでプレイしろと言われても、喜んでそっちに行くよ(笑)。 ―何しろ今度が12回目の来日ですから、日本のファンとシガー・ロスの間には、それなりの信頼関係が確立されているんだと思います。 ゲオルグ:僕もそう思うよ。日本でプレイする時は、バンドとオーディエンスの間に火花が散る。本当に素晴らしいことだよね。 --- シガー・ロス来日公演 2025年2月15日(土)・16日(日)東京ガーデンシアター 2025年2月19日(水)神戸国際会館こくさいホール
Hiroko Shintani