<高校野球>高専初の甲子園なるか 近大高専、学業多忙も「ハンディではない」 21世紀枠候補校
3月19日に兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕する第92回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)の出場32校が1月24日、選考委員会で決まる。そのうちの3校は、困難な環境の克服や地域貢献など他校の模範となるべき要素を選考条件に加えた「21世紀枠」で選ばれる。20回目を迎える21世紀枠。全国9地区の候補校から東海・近大高専(三重)を紹介する。【鈴木英世】 【写真特集】歴代の「21世紀枠」出場校 平日の夕方、2年生がノックを受けている後ろで、実戦的な練習を終えた1年生がダッシュや遠投といった基礎練習を繰り返す。練習が学年ごとに分かれるのは、授業の終わる時間が大きく異なるからだ。近大高専の重阪俊英監督(37)は「選手たちは忙しい日々を送っているが、与えられた環境の中、覚悟を持ってやっている」と説明する。 高等専門学校(高専)は大学や短大と同じ高等教育機関と位置づけられ、5年制の一貫教育で技術者を育成する。高校野球には3年生まで参加できるが、過去に甲子園に出場した高専はない。 工業系の近大高専は三重県熊野市で1962年に創立され、2011年に同県名張市に移転。授業は2年生まで高校で学ぶ一般教科と専門コース進学に備えた実験・実習があり、3年生から機械システム、電気電子、制御情報、都市環境の各コースに分かれる。3年で大学進学も目指せる一方、ほとんどの生徒は5年間学び、就職や大学編入学をする。 63年創部の野球部は18年11月に重阪監督が就任すると、19年秋の県大会で初優勝を果たした。東海大会では初戦の2回戦で加藤学園(静岡)に延長十回の末に4―5で敗れたものの、九回に追いつく粘りを見せた。 高専であるため、一般の高校よりも学業が忙しい。1年生の授業は6時限(午後2時35分終了)が基本。2年生になると実験などが増えて、週3日は8時限(午後4時15分終了)になる。平日に部員全員が集まることは少なく、学年別の練習で効率化を図っている。 さらに定期テストの「合格」は60点と高く、「合格」できなければ再試験や補習があり、練習に参加できない。田島大輔主将(2年)は「授業で試験に出そうなところをしっかり覚えるようにしている」と明かしつつ「ここで野球をやる以上、これが普通。ハンディではない」と言い切る。グラウンドでも教室でも集中力を発揮し、高専初の甲子園を目指している。