「雰囲気のいい居酒屋」が日本から消える…飲食業界を苦しめる「消費者の変化」
ラーメン業界のみならず各業界で進む「個人店淘汰」の流れ。吉野家のみならず、近年、ラーメン業界において、M&Aが相次いでいる。 【写真】創業から48年間「値上げしない博多ラーメン店」を直撃…「1杯290円」 ラーメン店の倒産の多さだ。2024年1~9月のラーメン店の倒産状況は47件で、前年同期比から42.4%増となった。これは集計を開始して以降最多で、2023年(1~12月)の45件を抜く結果となっている。 一方、日本ソフト販売株式会社の調査によれば、逆にラーメンチェーン全体の店舗数は前年比で0.7%の微増。 つまり、個人店、あるいはそれに近い中小事業者は厳しい状況に置かれているが、チェーン店舗については比較的安定傾向にあるといえるのだ。
居酒屋の生存競争が過激化
昔から「チェーン店が増えて個人店が厳しい」とは言われ続けてきたことだが、データが示すのは、この流れが加速している現状だ。ラーメン店で起こっている流れが他業界でも発生している。 例えば、居酒屋。帝国データバンクの発表によれば、居酒屋の倒産は、2024年1月~11月で203件発生。コロナ禍の直撃を受けた2020年を大幅に上回っていて、年間最多を更新することが確実になったという。 この背景にはラーメン業界と同じように物価高などの経済的要因、そして居酒屋特有のコロナ禍以後の「飲み会」に対する需要の変化がある。そして、ここでもその直撃を受けるのは中小事業者だ。帝国データバンクは次のように説明する。 大手居酒屋ではハンバーガー店やカフェへの業態転換を図る「脱居酒屋」の動きもみられる。しかし、中小零細の居酒屋では対応策も限られており、コロナ禍では見えづらかった居酒屋の優勝劣敗がさらに進むとみられる。 実際、居酒屋大手の「ワタミ」はその居酒屋を焼肉屋に変える動きなども見せているし、複数ブランドを持つ大手チェーンであればこのような業態転換が可能である。しかし、個人店をはじめとした中小事業者はそうはいかない。 もう一つ例を挙げよう。焼肉店だ。こちらはもっとすごい。2024 年に発生した「焼肉店」経営事業者の倒産は、1月~9月までで、すでに 39 件。2023 年同期間の16 件から倍以上に増加した。 さらに、7 月末時点で 2019 年通年の件数・26 件を上回っている。これは、もちろん過去最多となる数だ。そして、こちらも倒産した店舗の全てが個人経営店や、資本金1000万円以下の店となっている。 円安の影響によってアメリカ産牛肉の高騰などが経営を直撃している他、人件費や費の値上がりも大きな打撃を与えていると「門崎熟成肉 格之進」代表の千葉祐士は指摘している。 各業界、それぞれの事情はありつつも、基本的には物価高の影響、そして業態転換が出来ないことを背景として、個人店は極めて厳しい局面に置かれているのである。