社説:米原新市政 交通の要、活力に生かせ
米原市長選は、元滋賀県議で立憲民主党を離党した角田航也氏が無投票で初当選を決めた。 今回の市長選は、先月27日投開票の衆院選に立候補した平尾道雄前市長の辞職に伴い実施された。前回2021年の市長選に続き、市政のかじ取り役が2回連続、無投票で選出された。 市長選日程の決定から告示までが1カ月余りしかなかったことも影響したとみられるが、複数の候補者が市の将来像や、その実現に向けた道筋などについて議論し、有権者が選択する機会がなかったのは残念というほかない。 角田氏は平尾前市政を継承する意向を示している。来年で市制施行から20年。まずは通算4期約16年に及んだ前市政を丁寧に検証した上で、多様な市民の声を真摯(しんし)にくみ取り、米原の発展と新市政の色づけにつなげてほしい。 角田新市政が最優先で取り組まねばならないのは、伊吹山麓の土砂災害対策である。今夏、伊吹地区では住宅や道路が土砂で埋まるなどの被害に3度も見舞われた。 地球温暖化の影響で雨の降り方が極端になっていることと併せ、山の斜面の裸地化が被害を生みやすくしていると指摘されている。シカによる食害が、その大きな要因との分析がある。 滋賀県や市は、土石流の発生を検知する装置の設置などに取り組んでいる。これらの緊急対策とともに不可欠なのが、山の豊かな植生を復活させ、保水力を高めていく計画的な対策だ。 植樹などの長期的な活動を、市民らの共感と協力を得て進められるか。トップの手腕が問われる。 市の玄関口となる米原駅周辺の活性化策は、ようやく動き出す。駅東口では地元企業の研究開発拠点やマンションの建設が決まり、西口側でも旧米原町庁舎跡を活用した宅地開発が始まる。 4町の合併で現在の市域になった05年10月に4万2300人だった市の人口は、今年10月時点で3万6900人と、この19年間で1割以上減少した。県内で唯一新幹線が停車し、高速道路の結節点があるといった交通の便の良さを、生かし切れていないとの不満が市民の間に根強くある。 駅周辺の再開発を、市全体の産業振興や活力づくりにつなげる知恵と実行力が求められる。 地元生まれで、米原選出の県議を3期務めた角田氏には、県との交渉にも期待があろう。人口減少時代の地方都市の在り方を、県北部から具体化してほしい。