障害者に「特別扱いできない」はNG…来春から民間企業に求められる合理的配慮 「過重な負担」の線引き難しく〝炎上〟懸念も、当事者に入り交じる期待と不安
多くの企業が近年、誰一人取り残さないと掲げる国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」や、環境や社会課題などを重視する「ESG」への貢献をうたう。障害者への配慮もその重要テーマであるはずだが、三原氏は「企業の意識はまだまだ低い。前例にとらわれる傾向があり、ケースごとの柔軟な対応にも慣れていない。来春の義務化を、各社の事業の在り方を問い直す機会にしてほしい」と指摘した。 ▽「あなたのため」と主張し入店拒否…まずは話し合う姿勢を 合理的配慮の制度がうまく機能するかどうかは、障害のある当事者側にも不安がある。「過重な負担」を口実にして事業者が何の配慮にも応じようとしない恐れは残るからだ。障害者団体「DPI日本会議」(東京)の佐藤聡事務局長は「過重な負担だと判断するのはあくまでも限定的にしてほしい」と話した上で、かつて経験したこんなエピソードを紹介した。 車いすを使う佐藤氏が中華料理のチェーン店に入ろうとした時のことだ。「あなたが入ると(車いすで)通路が狭くなる。熱い料理を運んでいる時に、誤ってかかってしまうかもしれない。危ないので、あなたのためだ」と店側に入店を拒まれたという。
佐藤氏は「私からすると危ないなんてことはなく、通路も確保できるから大丈夫だと思った。こういう具合に認識のずれが生じる場合がある。事業者は勝手に判断して断るのではなく、どうすれば入店やサービス利用をできるのか、一緒に話し合う姿勢を持ってほしい」と呼びかけた。 ▽クレーマー扱い?障害者と事業者を「つなぐ窓口」 来春の義務化の円滑な施行に向け、内閣府は10月16日から専用の相談窓口を設けた。障害者と事業者の双方から電話やメールで相談を受け付け、自治体や関係省庁などに取り次ぐ。その名も「つなぐ窓口」で、障害者団体が要望していた仕組みだ。 祝日・年末年始を除く週7日、午前10時から午後5時まで フリーダイヤルは、0120(262)701 メールは、info@mail.sabekai-tsunagu.go.jp で相談を受け付ける。 佐藤氏は「配慮を依頼した障害者が、単なるクレーマーとして扱われるケースもあるのが現状だ。双方の対話だけで解決されない場合は、企業に改善を促すなど国や自治体には積極的な役割を担ってほしい」と話し、当事者が暮らしやすい社会の実現に期待を込めた。