障害者に「特別扱いできない」はNG…来春から民間企業に求められる合理的配慮 「過重な負担」の線引き難しく〝炎上〟懸念も、当事者に入り交じる期待と不安
調査票には ・視覚障害者がPCやスマホの読み上げ機能を使って情報を得られるようホームページを設計しているか ・補助犬同伴での入店の受け入れ義務など法令を正しく認識しているか ・合理的配慮に関する社員研修を実施しているか といった質問が並ぶ。 結果を踏まえ、ミライロが報告書を作成する。小売業や宿泊業、保険・金融業などとの契約が進んでいるという。ミライロの担当者は「健康診断のように、既に対応できている点や、改善点を可視化することで、漠然とした不安の解消につながる」とPRする。 ▽企業が戸惑う「過重な負担」の範囲 合理的配慮は、2016年4月施行の障害者差別解消法で、まず国や自治体に義務付けられた。2021年の法改正により、現在は努力義務とされている民間事業者も来年4月に義務化の対象となる。違反には直接的な罰則はないものの、国は必要に応じて報告の求めや指導、勧告などができる。
差別解消法は ① 障害者が希望する配慮の内容を伝える ② 企業が過重な負担にならない範囲で対応する という手続きを定める。企業は「特別扱いできない」「前例がない」などと拒むことは認められない。 一方で、具体的な配慮策は課していない。「過重な負担」の範囲も、障害の程度や企業規模などケースごとに異なり、それぞれで柔軟に対応する必要がある。この点が、企業が戸惑う要因になっている。 ▽合意点を探る「建設的対話」の決裂を防ぐには 例えば、視覚障害者がスーパーの店員に買い物の付き添いを依頼するケース。店側が混雑時に人手が足りていないことを理由に、すぐに対応することが難しくても「希望商品を伝えてくれたら、後で準備しておくことができる」と代替策を提案するなど、拒否するのではなく合意点を探ることが求められる。このプロセスは「建設的対話」と呼ばれる。 ただ、制度の周知が進んでいない中では、対話が決裂する恐れもある。ニッセイ基礎研究所の三原岳上席研究員は、炎上や、訴訟などの民事紛争への発展を防ぐため「NPO法人などがコーディネーター役を務め、やりとりを調整する仕組みが有効だろう。さまざまなケースごとに話し合いを積み重ねて社会全体で好事例を増やせれば、障害者を取り巻く環境を改善していくことができる」と語る。