主将「代役」で兄の夢を実現 東海大相模・深谷、初打席でヒット
「このグラブで日本一とってくる」。第93回選抜高校野球大会第10日(31日)の準決勝に挑む東海大相模(神奈川)の内野手、深谷謙志郎選手(2年)は、グラブに込めた思いと共に甲子園に来た。第9日(29日)の準々決勝。不動のショートだった大塚瑠晏(るあん)主将(3年)が急性胃腸炎のため欠場することになり、急きょお鉢が回ってきた。 【今大会のホームラン】 グラブは、五つ上の兄、優一郎さん(21)が平塚学園野球部の3年生だった2017年の夏に使っていたもの。高校入学に際し、優一郎さんが「甲子園に行きたかったが行けなかったので、甲子園で使ってくれたら」との思いで渡したものだ。 野球を始めたのは小学1年の時。兄の練習について行ったのがきっかけだった。現在、明星大学硬式野球部でショートを守る兄とは新型コロナウイルスによる緊急事態宣言下で互いに高校と大学の練習がなかった期間、2人でほぼ毎日グラウンドに行った。ノックを打ち合って意見を言い合ったり、キャッチボールやティーバッティングの基礎練習を重ねたり。寮に入っている深谷選手は、電話で守備に関して技術的なことや心構えを聞くこともあるという。兄を慕い、優一郎さんも「自分もなるほどと思うこともあるし、弟の姿を見て頑張らないといけないと思うから、いいライバルというか、いい関係」だと話す。 第9日の準々決勝、初のスタメン出場となった福岡大大濠戦。優一郎さんは、父らとスタンドに駆けつけた。「自分らしくチームに守備で貢献できるように意識した」と振り返るこの試合は一つの併殺を含めた守備の貢献だけでなく、二回に先頭バッターとして立った、自身甲子園初打席では右翼線に二塁打を放ちチームを勢いづける活躍を見せた。 日本野球機構(NPB)の審判員を務める父、篤さん(47)は仕事の合間を縫って初観戦。「ユニホーム姿を初めて見るので、試合前ノックや三塁コーチの姿を見ようと思ってきた」という中で、自身も2回出場経験のある甲子園大会でのスタメン起用に「しっかりやってくれた。不測の事態だったが準備ができていた結果だと思う」と活躍をたたえた。 優一郎さんも「あのグラブを甲子園で使ってるところを見られるとは思ってなかった」と喜び、「球際の難しいボールをアウトにしていたりとか、甲子園準々決勝で飛んできたボールを落ち着いてさばけていたり気持ちが強い。すごいと思う」と話した。目標まであと2戦。「ハツラツとした泥臭く明るいプレーで日本一」という目標への挑戦は続く。【宮島麻実】 ◇全31試合を動画中継 公式サイト「センバツLIVE!」では、大会期間中、全31試合を中継します(https://mainichi.jp/koshien/senbatsu/2021)。また、「スポーツナビ」(https://baseball.yahoo.co.jp/senbatsu/)でも展開します。