【着回しDiaryに出演】山崎紘菜さんが聞く! アリ・アスター監督と最新作『ボーはおそれている』について|CLASSY.
今回、CLASY.ONLINEではアリ・アスター監督へのインタビューが実現! 山崎紘菜さんがアリ・アスター監督に作品のこと、そして監督ご自身のことについてインタビューした内容を特別公開いたします!
見る人によって印象が異なる? 孤独を抱え続けるボー
山崎:3年ぶりの来日となりますが、久しぶりの日本はいかがですか? アリ・アスター監督:日本は大好きな国のひとつです。とくに日本の食べ物と文化が好きですね。食に関しては「グリッチコーヒー&ロースターズ」のエスプレッソは今まで飲んだ中で一番のものでしたし、モノづくりに関してもクラフツマンシップが根付いているところが気に入っています。前回の滞在で歌舞伎を観たので、今回はまた違うプログラムを観たいと思っています。また、能も観に行きたいですね。日本の自然に対する美意識には常に興味があり、日本の自然に従うという姿勢が良いと思っています。アメリカのように自然を無理やり変えようという感じがあまりなく、自然に対する真の崇拝があると感じています。滞在中に立ち寄った根津美術館の庭園などはそれを表していて、とても美しかったです。 山崎:早速『ボーはおそれている』についてうかがいたいのですが、映画を拝見して、ボーはとても優しくて善良な人間だと感じました。しかし、作中の他の登場人物達はみんなどこか少しおかしくて、狂気的で…そういった人達が大多数で「ボーは罪人だ」と責め立てると、善良な人間でも悪人になってしまう、事実がねじ曲がってしまう、ということに恐怖を感じました。 アリ・アスター監督:ボーの心配性や孤独感を表現したいというのがこの映画の原点です。僕も、ボーはいい人だと思っていて、すごくボーのことが好きだし共感できます。一方で、アメリカではボーが消極的すぎると批判を受けました。ボーが僕に非常に近いキャラクターであるだけに、とても悲しかったですが、礼儀正しさが文化として根付いている日本社会においては、山崎さんのように受け入れてくれる人が多く、共感を生むのではないかと思っています。 山崎:監督がボーに共感されたのはとくにどういったところですか? アリ・アスター監督:何かと悲しみを抱えていて、不安で、決断するのが怖いというところです。監督業や執筆する中ではそういった怖さを抱くことはなく、どんどん決断できるのですが、日常の中では極度の優柔不断であり、いつも本当にこれが正しいのだろうかと悩んでいます。小さいことだと「今日はどこで外食するのか」とか、「誘われた旅行に行くべきなのか」とかであったり、もう少し大きな問題になると、「この人と付き合うべきなのかどうか」というところまで、自分の選択した結果、何が起きるかということをいつも心配しているので、決断においては非常に神経質です。 山崎:ご自身が「選択」を恐れている、というのは驚きです。 アリ・アスター監督:選択することによって起きること、例えば死ぬことであったり、病気になることであったり、あとは他人に対して抱く怖さですね。他人が怖いのはある程度自然な状態ではあると思いますが、アパートから出られないほど極度に恐れを抱くとなると問題ですよね。この映画はそんな日常に潜む恐怖をちょっと大げさに、マンガらしく描いたものなんです。