大谷翔平は救世主、人気下火のMLBに到来した「千載一遇のチャンス」
MLBはこの熱狂を「空振り」しないことが大事だ。大谷ファンを野球ファンにしなくてはならない。かつて米国を代表する娯楽だった野球は、プロフットボールのNFL、プロバスケットボールのNBA、そしてサッカーにファン人口を奪われている。ワールドシリーズのテレビ視聴率はピークから80%低下し、NFLのレギュラーシーズンの試合を下回っている。
MLBとドジャースは、大谷の移籍が大谷自身の成功、ひいてはスポーツの成功につながると期待している。それはすでにチケットの転売価格に反映されている。
大谷翔平の入団効果歴然、ドジャースのチケット人気ヤンキース抜く
ロバーツ監督は大谷だけでなく、ドジャースの外野手ムーキー・ベッツや大谷の古巣エンゼルスの長打者マイク・トラウトを挙げ、「野球が他のスポーツから市場シェアを取り戻す千載一遇のチャンス」と話す。「今はフットボールに負けているが、われわれの目標は野球を世界一人気の高いスポーツにすることだ」と語った。
大谷が生まれてから数カ月後の1995年、野茂英雄投手が近鉄バファローズを退団してメジャーに挑戦した。移籍先のドジャースでは奪三振数でナショナル・リーグ首位に立ち、「ノモ・マニア」旋風を巻き起こして新人王に選ばれた。98年には日本プロ野球とMLBが移籍のシステムを近代化し、その後のイチローや松井秀喜らのメジャー移籍を可能にした。それは同時に、日本のプロ野球がトップスターを抱えきれないというサインでもあった。
作家のロバート・ホワイティング氏は著書の「世界野球革命」の中で「彼らがチャレンジするのは、より高いレベルで自分を試すため、そして日本野球に特有な窮屈な構造と過剰な干渉から抜け出すためだ」と説明している。同じ野球でも日本だと選手は疲労困憊(こんぱい)させられるという。日本では調子の悪い投手は練習量を増やすが、米国では逆に数日休ませる。もちろん金銭的条件もメジャーへのチャレンジと無関係ではない。