過去4年で3度の4強入り。“夏の米子北”は準決勝からの難しさをどのチームよりも熟知。今度こそ悲願の日本一を果たせるか【総体】
1点を奪ってからは5バックに切り替えて逃げ切り
[インハイ準々決勝]米子北 1-0 市立船橋/7月31日/JヴィレッジP3 2021年のインターハイは準優勝。翌2022年はベスト4。今回の準決勝進出によって、4年で3度の4強入りを果たし、すっかり“夏の米子北”の板が付いてきたが、中村真吾監督には勝ち上がりによる充実感以上に“しんどい勝ち上がり”だと感じているという。指揮官は「ずっと勝っているけど、こんなにきつかったのは初めて」と口にする。 【画像】堀北・ガッキー・広瀬姉妹!初代から最新19代目の藤﨑ゆみあまで選手権「歴代応援マネージャー」を一挙公開! Aチームで試合経験を積む選手が少ない今年は、決して戦力的に秀でた年ではない。プレミアリーグWESTも開幕戦こそ勝利したが、以降は黒星が先行し、前期を終えた時点で降格圏内の11位。試合を見てもFW鈴木颯人(3年)や、MF柴野煌(3年)、DF樋渡蓮音(3年)といった昨年から主力を張っていた選手がチームを引っ張るプレーができずにいた。 そうした選手たちに対し、中村監督は“我慢と思いやり”という言葉を口酸っぱく言い続け、人間的な成長を促してきた。大会前には「我がままばかり口にする選手が多かったけど、だいぶ人を思いやれるようになってきた」と評していた通り、少しずつではあるが成長が見えてきたなかで挑んだのが今大会だった。 インターハイ期間中の成長も著しい。「何がきっかけで成長するか分からない」と話すのは中村監督で、1回戦の東邦高戦は前半に先制されながらも後半に追いついてPK戦で勝利。「プレミアでも不安定で失点を重ねる試合があったのですが、この大会の1回戦でPK勝ちしたのは大きかった。そこから、少しずつチームの雰囲気が良くなってきた」と城市徳之総監督が口にすれば、「試合を重ねるごとにチームの一体感が出てきて、やるべきことが整理されてきた」と中村監督も続ける。 市立船橋高との準々決勝は選手、チームの成長が感じられる試合展開で鈴木や柴野、樋渡がこれまでとは違い、チームを引っ張るプレーを披露する。彼らと歩調を合わせるかのようにGK広川武寛(3年)ら今年からレギュラーを掴んだ選手、DF浜梶優大(2年)と熊野俊典(1年)によるCBコンビなど下級生も堂々としたプレーを続ける。 決勝点も米子北らしさを感じるゴールだった。「相手が嫌なことは裏のスペースに抜けることなので、継続してやり続けようと思っていた」(鈴木)と試合序盤からロングボールで相手DFの背後を狙い続けた。 終盤になってからは相手への圧力を強め、疲れが出るだろうと予想していたCBとSBの間を狙ったボールを入れ続けた結果、後半13分に生まれたゴールが鈴木の決勝点だった。1点を奪ってからは5バックに切り替え、チーム全員で逃げ切りを図った。 近年の定位置と言える4強までたどり着いたが、準決勝からの難しさはどのチームよりも分かっている。「ここからが勝負弱い」と中村監督がこぼす通り、過去2回は勝利が目前に迫りながらも取りこぼしているが、日本一を諦めているわけではない。 「優勝したことがないから分からないけど、本当に優勝を目ざしているかどうかが大事。優勝を本気で目ざしているからこそ、笑ったり泣いたり、怒ったり色んな感情が芽生えて、(選手の)成長速度が加速していく。目ざさなければ成長しない」 準決勝で対戦するのは、7月上旬にプレミアリーグで対戦し、2-4で敗れた神村学園。分が悪い相手であるのは確かだが、全力で勝利を目ざす。そうして掴んだ成長が、日本一に繋がっていくと信じている。 取材・文●森田将義
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