上高地の登山シーズン開幕 育ちつつある新しい登山文化
上高地(長野県松本市)の登山・観光シーズン開幕を告げる上高地開山祭が27日、梓川に架かる河童橋のたもとで行われ、観光客ら約2000人でにぎわいました。連休中は好天の見通しとなり、山小屋などの関係者は「昨シーズン悪天候だった分、今年は立ち上がりでダッシュしたい」と力が入っています。シーズン開幕を機に日本有数の山岳観光地の魅力と歴史を振り返りました。 【写真】多発する冬山遭難 遭難は「出発前」の自宅から始まっている?
開山祭に待ちわびた2000人集う
開山祭ではアルプホルンの演奏の後、参加者らが山の安全を祈願しました。まだ雪をいただく穂高連峰が眼前に迫る河童橋は観光客らでいっぱい。台湾から観光で訪れた女性数人のグループは「山の上に広がる空が青くて、空気も新鮮」と喜んでいました。
近くのキャンプ場・小梨平では恒例となったグループの小宴会が始まり、焼きそばなどの屋台には長い行列が。松本市内の中年女性グループは車座になって各自持参の煮物や漬物を持ち寄り、「山にも一緒に行く仲間。今日は楽しみます」。 開山祭に姿を見せた涸沢ヒュッテの山口孝社長(67)は、「今年4月の雪解けはここ10年来というほどの早さで、小屋開けも順調でした。去年は悪天候が続いて紅葉も駄目。山小屋は本当にお天気次第だと痛感させられました。今年は神様に好天を祈るばかりです」と力を込めていました。ヒュッテはこの日から営業開始です。
5月の連休前後でも雪に注意
上高地は中部山岳国立公園にあり、槍ケ岳(標高3180メートル)、涸沢(同2300メートル)、穂高連峰などにアプローチする基点。槍ケ岳を源とする梓川が下って犀川となる流域のうち、槍ケ岳のふもとの横尾から徳沢、明神、河童橋、大正池までの梓川沿いの盆地状の地域を指し、標高は1500メートルです。 本格的な冬山登山を除けば、登山シーズンは5月の連休前後から始まり、山小屋もオープンします。ただ、この時期は各所に雪があり、長野県警の春山情報によると、急斜面や沢筋で雪崩や滑落の危険個所が多数あります。連休期間中は上高地などに登山相談所、涸沢に県警山岳救助隊が設けられます。 夏山シーズンには河童橋から梓川沿いの約10キロを3時間ほど歩くと槍ケ岳登山の入り口の横尾に着きます。ここで涸沢に向かう登山道と分かれ、涸沢には2時間半から3時間。途中の休憩地点でもある渓流沿いの本谷橋から上が急登になります。その先にある小さな風穴は夏のシーズンに「冷蔵庫」と名付けられて登山者の休憩の楽しみになっています。