フェイスブックが放置する「大統領選の虚偽広告」、週に5000万円以上の収入に
11月5日の米大統領選挙の投票日が目前に迫る中、フェイスブックには、「選挙が不正に操作される」もしくは「延期される可能性がある」といった虚偽の主張を含む数百件の広告が掲載されている。 フェイスブックの親会社であるメタの広告ライブラリによると、これらの広告の背後にいるFacebookページは、同社に100万ドル(約1億5000万円)以上の広告掲載料を支払っている。また、その額は過去1週間だけで35万ドル(約5300万円)を超えている。 ある広告には、カマラ・ハリス副大統領が悪魔の角をつけ、背後でアメリカ国旗が燃えている画像が使用されている。他にも、人工知能(AI)で生成されたと思われる、ハリス副大統領が病院で泣き叫ぶ子どもたちに注射をしようとしている画像を使用した広告などが確認できた。 メタは、「投票の日程や場所、時間、方法に関する誤情報」や「候補者が出馬するかどうかに関する誤情報」を含む投稿を禁止しており、広告のルールで「選挙の正当性に疑問を投げかける広告」を禁止している。同社の広報担当者であるライアン・ダニエルズは「当社は、これらの広告を審査中で、ポリシーに違反するものは削除する」と述べている。 フォーブスは、メタの広告ライブラリを通じて、虚偽の広告を特定した。このライブラリは、広告の詳細や、政治広告主の支出情報を提供するものだ。一方、グーグルの広告ライブラリでは、この種の広告を見つけられなかった。TikTokとX(旧ツイッター)は、欧州の規制を受けて広告ライブラリを公開しているが、米国の広告主や支払い額は非公開にしている。 メタは、以前から選挙に関する誤情報の取り扱いに苦慮してきた。2016年には、ロシアの情報工作機関のIRAが、フェイスブック上の広告とオーガニックな投稿の両方を利用し、米国の有権者に働きかけ、ドナルド・トランプを支持する方向に導いた。2020年には、トランプの支持者が選挙が盗まれたという陰謀論を拡散するためにフェイスブックとワッツアップの両方を使用し、翌年1月6日の連邦議会議事堂の襲撃事件の発生につながっていた。 ■政治広告の影響力は上昇 メタは、2021年以降に政治関連の投稿の表示量を大幅に削減しているが、このことは、候補者や政党のメッセージを届ける上で、有料の政治広告がもつ影響力を高める可能性がある。ハリス副大統領は、今回の選挙でトランプを大きく上回る費用をフェイスブックの広告に支払っている。 フェイスブック創業者のマーク・ザッカーバーグと妻のプリシラ・チャンは、2020年に選挙インフラの改善に焦点を当てる非営利団体に4億ドル(約609億円)以上を寄付していたが、今年の選挙で彼らがその寄付を継続している様子は確認できていない。 しかし、ザッカーバーグは、7月にトランプが暗殺未遂事件を生き延びた際に、彼を「凄い奴だ」と呼んでいた。トランプはザッカーバーグから電話があり、「次の選挙で私は民主党に投票できない」と言われたと主張している。メタは、その通話があったことを否定しなかったが、ザッカーバーグは選挙の投票については発言していないと述べている。
Emily Baker-White