なぜ人は筋肉に魅せられる?【筋肉博士・石井直方が解説】
「強い個体」であることは生き物にとって重要な要素
筋肉を鍛えるという行為は、太古の時代から人間社会の中で確立されていました。彫刻や絵画になっているギリシャ神話の神々を見ても分かるように、いつの時代からか、筋肉を鍛えることが美学の一つとして浸透していたようです。 【写真】見る者を魅了する日本最高峰の筋肉たち これは考えてみると当然のことと言えるでしょう。あらゆる生き物にとって「強い個体」であることは生きていく上で重要な要素。それは生存競争を勝ち抜いていく力であり、子孫を残す力でもあるので、その種の中で優秀な個体ということになるわけです。 パートナーを選ぶ際にも、より強い個体と交わったほうが自分の遺伝子を未来に残しやすくなるので、オスがメスを引きつける要素の中にも「強さ」や「大きさ」などが含まれるのが普通です(中にはメスのほうがオスよりも大きな体をしていて強い場合もありますが)。これは原始的な生き物から人間に至るまで、基本的には同じです。 メスがオスを選ぶ基準も動物によって様々ではあります。たとえば鳥などは声や色の美しさが問われることが多いようです。クジャクなどはその典型でしょう。一見、強さとは無関係に思われがちですが、美しくいられることは血統や栄養状態が良いということであり、それが生きのびる強さを表わすことにつながります。 人間に近いゴリラや類人猿になると、オスの強さは体そのものに表われるようになります。ゴリラは筋肉隆々で体が大きいほどボス的な存在になり、咬筋(噛む筋肉)や頭頂部の発達でも強いオスを見分けることができます。 一方、メスも成長するほどにメスとしての機能が発達し、見た目もメスらしくなっていきます。やはり与えられた環境で生きていくための変化であることは言うまでもありません。多くの動物では単純な腕力やパワーはオスより劣りますが、優秀なオスをパートナーに持って子孫を残すための体がつくられていくわけですから、それがメスとしての生きる「強さ」であると言えます。