なぜ令和にフィルムカメラ発売、リコーが21年ぶり新モデルに詰め込んだ〝こだわり〟とは
リコーイメージングは12日に国内で21年ぶりとなるフィルムカメラの新モデル「ペンタックス17(イチナナ)」を発売する。近年、若者を中心に広がるレトロブームを追い風にフィルムカメラの需要はにわかに増えているものの、市場の大半はデジタルカメラが占める。そんなデジタル全盛の今、なぜアナログな新製品の投入を決断したのか。商品企画を担った鈴木タケオ(TKO)氏に聞いた。 【写真】21年ぶりとなるフィルムカメラの新モデル「ペンタックス17(イチナナ)」 ■安心して楽しめる環境を ――どのように企画が始まったのか 「2020年頃の社内プレゼンテーションにフィルムカメラの新商品企画を持ち込んだのが最初だった。100ページに及ぶ資料を使って説明したのですが、デジタルカメラの次の戦略について話し合うような場で、聞いていた幹部たちの表情は凍り付いていた。そんな温度差のある段階から企画が始まった」 ――なぜフィルムカメラだったのか 「この頃には若い人を中心にフィルムカメラのユーザーが増え始めていた。ただ、聞いていると、選択肢は中古品しかない状況。中には高い金額で購入したのにうまく動かず、修理もままならない環境で使っている若者もいた。だったら、メーカーとして新しいフィルムカメラを発売し、保証もつけて、安心して楽しめる環境を作りたいと思った」 ■復刻でなく新たな仕様で ――開発までの経緯は 「商品企画のプレゼンから数日後、社内では徐々に『一緒に作りたい』といった共感の声が集まってきた。それをきっかけに商品化に向けたプロジェクトが立ち上がった。ただ、開発現場のトップは『今更、フィルムなんて売れないし、無理』と乗り気ではなかった。それを私がしつこく説得した。すると、そのトップは『できないことはないけど…』と譲歩し始めたので、『後はできる理由を私が探す』とたたみかけて。そこから、ようやく企画と開発が一緒に議論を進められるようになった」 「ただ、当時のフィルムカメラの設計図面を参考にすれば作ることはできたが、『この部品が何のためにあるのか』といった疑問点が次々に出てきた。すでに退職した当時のエンジニアにも教えを請いながら、一つ一つ未解決部分を埋めていく作業を繰り返し、形にしていった」 ――商品コンセプトは