コンパクトながらもAI機能も活用可能 ASUS初のCopilot+PC『ASUS VivoBook S15』の使い心地を体験してみた
Microsoftが新たに定義したPCのカテゴリである「Copilot+PC」。この名前を冠するPCは、AIアシスタント「Copilot in Windows」に代表されるAI機能を動かすのに十分な性能を持っているという指針になる。今回はASUSのCopilot+PC『ASUS VivoBook S15』でその使い心地を確かめた。 【写真】180度開く筐体はスリムで軽い ■コンパクトで汎用性の高い機体にCopilot+PCを搭載 『ASUS VivoBook S15』はASUS初となるCopilot+PCであり、シリコンにはQualcomm Snapdragon X Eliteを採用する。Wi-Fi 7にも対応し、メモリは32GB、16GBの2モデルから選べる。インターフェースは左手側側面にHDMI、USB Type-C(USB4.0) x2、microSD、ステレオミニ。右手側側面にUSB Type-A(USB3.2 Gen1) x2を備える。美しく大きな16:9、15.6インチのOLEDパネルはリフレッシュレート120Hz、P3色域の100%表示が可能。タッチパネルは搭載しないものの、180度まで開くヒンジの作りは良好だ。ディスプレイ上部には顔認証やビデオ通話に使えるカメラがあり、上部のスライダーを横にスライドするとカメラの前面を遮蔽できる。 重さは約1.42kgで、手に持ってみると軽量で驚かされた。15インチPCのサイズ感はここ数年でとても小さく・軽くなったと感じる。厚さは実測で約2.1cm。キーボードはテンキーのあるアイソレーションタイプで、バックライトのRGB照明設定は純正ソフトウェアで自由に変更できるという。なお、Windows"最新のキー"である「Copilotキー」も付いている。これを押すと「Copilot in Windows」が即起動する。付属のACアダプターはUSB Type-Cの最大90Wと高出力だが、意外と小さいので嬉しい。 バッテリは最大18時間稼働するため携帯することも少ないだろう。外出時には別途、より小さな出力の低いアダプタを持ち歩くのも悪くない。なお、PCの外箱は外箱をスタンドとして再利用できるようだ。遊び心もあり、エコでよい。 ソフトウェアの話に移ると、プリインストールOSはWindows 11だが、動くアプリケーションには注意が必要。前述の通り本機のシリコンはSnapdragonシリーズであり、WindowsもARM版となるため長年供給されてきたx86・x64用アプリケーションとの互換性が無い。 バイナリの変換機能によりx86・x64用アプリケーションとの互換性はある程度保たれているものの、完全な動作は保証されないのだ。これは本機に限らず執筆時点のCopilot+PCすべてに言えることなので、実際の導入時にはいつも使っているアプリケーションがARM版Windowsにも提供されているのか、あるいはバイナリ変換で正常に動くのかをあらかじめ確認しておこう。 とはいえブラウザベースのサービスは基本的に動くのに加え、Microsoft Officeのアプリケーション群はもちろん動作するし、『Zoom』や一部のAdobe製ソフトウェア(『Adobe Photoshop』など)、多くのアプリケーションがARM版Windowsでも動作することが確認されている。「Slack」もベータ版だが提供されており、こうしたオフィス用のアプリケーションが一通り動けば十分、というユーザであればひとまず使えるかと思う。「Google Chrome」のARM版も今年から提供されている。 ■パワフルなNPUを使ってAI機能をしっかり活用したい ただし、こうした既存のアプリケーションを動かす用途のみに『ASUS VivoBook S15』を使うのは役不足だろう。AIの軽快な動作を保証するパワフルなNPUを使わないのはもったいない。今後はサードパーティからもCopilot+PCに向けた意欲的なアプリケーションが生まれてくるかと思うが、現状の活用シーンとしてはMicrosoft純正の「Copilot in Windows」や、各種アプリケーションに搭載されたAI機能を試すことになるだろう。私が特に面白いと感じているのは「CoCreater(コクリエイター)」の機能だ。 Cocreaterは『ペイント』で使える機能であり、テキストプロンプトに生成したい画像の内容を描き、ラフをペイント上に描くことでAIが絵を生成してくれるというもの。「創造性」のスライダーと「画風」を操作することで、AIの描画スタイルも操作できる。 高速なNPUを搭載しているCopilot+PCは、このような処理をPC内部で扱うことができる。こうした創造的な機能のためにコンピュータが進化することは面白いと感じるし、OS標準のアプリケーションがこの機能を備えているというのも嬉しい。多くの人がこうした機能に手軽にアクセスできることに、大きな意味があると感じる。 また『ASUS VivoBook S15』にはAIを活用するASUS製アプリケーション「StoryCube」がプリインストールされている。ユーザが撮影した写真・動画・オーディオを閲覧できる簡易的な画像管理・編集ソフトで、画像に写っている人物やシーンの識別にAIが活用されている。 まとめると、ハードウェアとしては実直な製品だが、アーキテクチャの新規性を理由とするネイティブ・ソフトウェアの少なさには注意する必要も。もっとも、これは現在販売されている「Copilot+PC」すべてに言えること。むしろこれからどんなアプリケーションが生まれるのかが楽しみだし、WindowsのノートPCにおけるAI関連テクノロジーの発展がここから始まることは間違いなく、そうした事象を喜ぶユーザにとってはむしろ手堅い選択肢になるだろう。
白石倖介