「251時間拘束されて死亡」春川の精神病院、「ゾウ注射」毎日投与=韓国(1)
投薬記録ではアチバンとハロペリドール注射24回 初日には6回も投与…「命に致命的な影響」
「毎日隔離と拘束を行うとともに、ハロペリドールとアチバンの注射を連続で打っているのが分かります。特に最後の隔離・拘束の際にはさらにお気の毒です。ほぼ食事もできず、栄養供給ができていない状況で注射投与と薬物服用だけしています」 春川(チュンチョン)〇病院の隔離室のベッドに251時間50分ものあいだ拘束された末、2022年1月8日朝に亡くなったキム・ヒョンジンさん(仮名、45)の投薬記録を確認した精神科専門医の見解だ。ハンギョレが12日、複数の精神健康医学科の医師と診療記録を改めてあたったところ、キムさんには入院してから12日もの間、1日平均2回、アチバン注射(成分名:ロラゼパム、日東製薬)とハロペリドール注射(明仁製薬)の連続投与、いわゆる「ゾウ注射」が行われていたことが確認された。どちらも神経遮断薬として機能する精神作用薬だ。「ゾウ注射」とは、ゾウも倒れるほど鎮静効果が強いという意味で、精神疾患の当事者の間で使われる言葉だ。 精神科専門医は、解剖ができないため正確な死因は分からないが、抗精神病薬の過剰な投与が心臓に異常を引き起こすとともに、血栓塞栓症の原因となる可能性もあると指摘した。専門家は「神経遮断薬による悪性症候群が生じて重症の筋肉の硬直、血圧の不安定、発熱が見られたり、筋肉細胞の損傷によって血中のミオグロビンの数値が上昇して腎臓に致命的な悪影響を及ぼしたりする可能性もある」とし、「高熱が続き、意識障害、呼吸困難、循環虚脱、脱水症状、急性腎不全などが重なると、死に至る可能性がある」と述べた。 過度に薬物を投与された状態で患者が受けた拘束は、身体的機能の低下を加速させうるということだ。このような致命的な副作用があるため、医療スタッフによる継続的なモニタリングと管理が必要だが、春川〇病院はキムさんの入院期間中、80%以上の時間を拘束しながら、患者の状態の確認を疎かにしていた。 ハンギョレは7月1日から3回にわたって春川〇病院死亡事件を連続報道した。双極性感情障害と診断された被害者のキムさんは、コンビニエンスストアで騒ぎを起こしたとの理由で2021年12月27日午前5時ごろ、警察によって春川〇病院に緊急入院させられた。3日後に春川市長によって行政入院に転換され、計289時間20分の入院期間のうち251時間50分もの間、ベッドに拘束された末に死亡した。総拘束時間は、富川(プチョン)Wジン病院で拘束された末に死亡したPさん(33、女性、計2回、3時間拘束)の80倍を超える。 注射の回数も比較にならないほど多い。キムさんは24回で、富川のPさんは5回だ。ハンギョレは先に、Pさんが死の直前まで強い高用量の薬物を投薬されていたと報道しているが、春川〇病院のキムさんはその5倍近い量を投薬されていたのだ。富川は入院期間が17日、春川は12日だった。性別と症状の違いを考慮しても、春川〇病院の被害者キムさんは想像を超える過度な処置を施されていたわけだ。 春川〇病院の被害者キムさんは、初日からアチバン注射とハロペリドール注射を各3回、計6回連続で打たれていた。薬学情報院はハロペリドール注射の説明で、「できるだけ早く経口投与に転換せよ」と警告しているが、その理由は、注射薬が経口薬の1.6倍以上の力価(薬の強さ)を持ち、身体的な副作用が起きる可能性が高いからだ。 にもかかわらず初日に6回も注射を打たれたキムさんは、その後も28日から31日まで毎日2回ずつ同じ注射を打たれ続けた。注射薬の投与が行われなかったのは、2022年1月1日と6日のみだ。1月3日には4回打たれている。精神科の専門医は、「患者の状態を観察せずにこのような筋肉注射を連続で打つのは非常に危険」だとし、「特にハロペリドールは心臓伝導障害が、アチバンは呼吸不全の副作用が起こりうる。身体的に心肺機能の低下を同時に引き起こす、命に大きな影響を与えうる薬物投与」だと述べた。(2に続く) コ・ギョンテ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )