『民王R』が2つの意味で“面白い”ことに 五頭岳夫の出演で『地面師たち』パロディも
『民王R』(テレビ朝日系)が面白いことになっている。その面白いというのは2つの意味であり、まずは第1週を受けての反響の大きさだ。X(旧Twitter)では世界トレンド1位を獲得。総理大臣・武藤泰山(遠藤憲一)との入れ替わりの対象となった秘書・冴島優佳を演じるあのの高い演技力が称賛され、放送翌日にはあのが自身のYouTubeチャンネルにて『民王R』の裏話を話したほぼ撮って出しの動画をアップしている。話題となった会見でのシーンは、本番1発でOKが出た渾身のカットだったという。ナレーションであり民神である菅田将暉の続投、さらに貝原(高橋一生)のサプライズ登場もその反響に拍車をかけていたのは言うまでもない。 【写真】白鳥翼(溝端淳平)の話を聞く泰山(遠藤憲一) そしてもう一つが内容の面白さ。中でも放送のタイミングが神がかっている。初回は10月27日の衆議院議員総選挙を前にしての放送スタートであった。第2週の入れ替わりの対象は、闇バイトに手を染めた若者の木下直樹(曽田陵介)。実際に闇バイトによる強盗殺人事件が起きている渦中の、“無理ゲー”と嘆く若者の貧困、孤立にフィーチャーしたリアリティのある内容となっている。さらに11月5日に行われるアメリカ大統領選挙を前にして、第3話(放送日も11月5日!)ではアメリカから緊急来日するバーガー大統領(見た目はどう見てもドナルド・トランプ)の相手を泰山が対応するという、神をも味方につけたかのような放送スケジュールなのである。 『民王R』の特徴は、入れ替わり相手の出番が必然的に多くなるということ。第1話の冴島がそうであったように、第2話では木下(中身は泰山)を演じる曽田陵介が主役回と言ってもいい活躍を見せている。眉間に皺を寄せ、ガニ股、肩で風を切るような歩き方で、ドスをきかせた大声となると、どうしても『民王』(テレビ朝日系)で泰山の息子・翔を演じた菅田将暉を想起してしまうものの、憂いを帯びた表情は木下としての孤独と復帰への希望を示していたように思う。 曽田のほかに、第2回のゲストとして注目を集めたのは、ファミレスの常連客で、木下の顧客先の会長であることが後に分かる老人・村田(五頭岳夫)。演じる五頭岳夫は、Netflixシリーズ『地面師たち』で一躍脚光を浴びたあの俳優だ。木下の「毎日来てるな」という問いかけに、村田は「ここでコーヒー飲むの日課にしてまして」と返答。つまりは「ガストによく行きます。ガストの方が美味しいので」ということだろう。さらには、白鳥翼(溝端淳平)の「最高にエキゾチックで」という明らかにハリソン山中(豊川悦司)を意識したセリフも飛び出しており、全体的に『地面師たち』のパロディとも言えるシーンがインサートされた回でもあった。 もう一つ印象的だったのは、公安の新田(山内圭哉)との会話がスクリーンに映し出されるが、新田は子どものご飯の準備の途中で焼きそばを作っていることが分かり、最後には卵焼きの味見をし出すという、思わずクスッと笑ってしまうような場面。よく見ると、冴島を演じるあのが笑いを堪えきれずに肩を揺らしており、真面目な社会問題を描きながらも、こうした笑いを提供してくれるところもまた『民王R』の面白い部分である。
渡辺彰浩