【高校野球ベストシーン’23・茨城編】9回土壇場で好投手攻略!夏甲子園初4強の土浦日大の原点だった大逆転優勝
2023年もあとわずか。ことしも高校球界ではさまざまな印象的な出来事があった。各都道府県ごとにベストシーンを思い出してみよう。 【動画】霞ヶ浦・木村優人を徹底密着!世界を翻弄した魔球・カットボールがエグかった... 【選手権茨城県大会決勝・土浦日大vs.霞ヶ浦】 甲子園出場が決まる試合では、思いもしないドラマが起こる。今年の茨城大会決勝は、その象徴のような試合だった。0対3と完封負け寸前だった土浦日大が、9回に7安打で一挙5得点。霞ヶ浦のエース、木村 優人投手(3年)を最後の最後で攻略。2018年以来、5年ぶり5度目の優勝を、最終回の大逆転ゲームで飾った。 9回、土浦日大打線が火を噴く。先頭打者から連打で無死二、三塁。1死後、1番・中本 佳吾内野手(2年)が、内角球を弾き返す中前2点適時打を放って1点差に詰め寄る。続く太刀川 幸輝外野手(3年)は、低めのカットボールを拾うような左前安打。その後、2死一、二塁となったが、4番・香取 蒼太外野手(3年)が初球を引っ張り三塁線を抜く適時打でついに同点とする。 「流れ」も土浦日大に味方する。続く5番・松田 陽斗内野手(3年)は、ギリギリで一塁側内野スタンドに入るファウルの直後、右前への適時打を放って逆転に成功すると、鈴木 大和内野手(3年)がフルカウントからの直球を右前へ適時打にして、その差を2点に広げた。四死球も失策もない。すべてバットからの快音で5点を奪って甲子園の切符をつかんだ。 「予兆」はあった。8回までは無得点だったが、7安打を放っていた。初回の満塁のチャンスをはじめ、再三得点圏に走者を進めながら、木村に要所を抑えられていた。こうなると、野球の流れとすれば霞ヶ浦に一方的に流れていきそうだが、打者は諦めず木村を攻め続けた。ボディーブローのように効いてきた打撃が、9回に一気に花開いた。 優勝した土浦日大は、甲子園の初戦でも集中打を披露した。開幕戦の上田西(長野)相手に延長10回表に5連打などで一挙6得点して勝利。その勢いで勝ち上がり、初の4強をつかんでいる。 敗れた霞ヶ浦の木村は満身創痍だった。3点を先制した3回、打者として一塁を駆け抜けた際に激しく転んだ。大事には至らなかったが、ユニホームは泥だらけになった。そのアクシデントの影響からか、終盤になるにつれ、球の勢いに翳りが見えていたのは否めなかった。チームメートとともに甲子園を目指して踏ん張っていたが、あとアウト1つというところで、土浦日大の集中打の前に屈した。 ゲームセットの後、両チームの選手が声を掛け合って激闘を称え合うなか、木村の表情が印象的だった。土浦日大の選手と次々と抱き合った。涙はなく、晴れやかな表情にも見えた。悲願の甲子園出場はあと一歩で逃したが、悔いは全くない。そう言いたげにも見えた。その後、U-18W杯戦士として世界一にも貢献。ロッテ3位指名を受け、来年からプロとしてスタートする。この夏敗れた経験は、大きな財産として次なるステージに必ず生きる。