新車ディーラーにとって「新車」よりも「認定中古車」販売のほうが美味しい! 厳しい新車販売店のいま
中古車は新車より儲かる
購入者側としては、新車で購入するよりは安く買うことができるというメリットがある。 あくまで中古車は中古車、新車の延長のような存在で高年式の中古車購入を検討し、「新車で買うよりは安いな」と感じるレベルとなっており、新車でコスパやタイパの悪い値引き交渉を嫌う人などは認定中古車が気になる存在となっているようだ。 認定中古車はもともと、ディーラーが新車ショールームに併設や、まったく新車ショールームとは異なる場所に構えた中古車展示場に置かれることがほとんどであった。しかし、いまなぜ新車ショールームに置くようになったかといえば、新車ディーラーであっても、収益確保のために中古車販売に頼らざるを得ない状況となっているからである。 諸物価高騰に歯止めが利かないなか、新車の価格もストレートな値上げのほかにも、一部改良やモデルチェンジなどのタイミングで値上げぶんも加味した「新価格」となっているのが現状。しかし、コスト上昇分を十分吸収するようなレベルの値上げとなっていないので、値引き余力が圧縮され、コロナ禍前のころのレベルまでは交渉しても値引きアップすることはかなりまれであり、「原則値引きゼロ」という車両やブランドも珍しくなくなってきている。 それでも新車販売で得られる利益はたかがしれているのが実情。この傾向はいま始まったばかりでもなく、過去には点検・整備の収益で補填していたのだが、こちらも最近の諸物価高騰の影響により、交換部品や交換油脂類、そして人件費の高騰などで利幅がどんどん少なくなってきている。 そこで白羽の矢がたったのが中古車販売というわけである。中古車は「古物」という扱いとなる。テレビの人気お宝番組に出てくる陶磁器や掛け軸、絵画などと同じ扱いになるのである。同年式同色同グレードで同仕様であったとしても、走行距離や内外装の状態で値付けは1台1台変わってくる。つまり、新車に比べると販売価格に「蛇腹」を持たせやすく、そのぶん新車を売るよりはるかに利幅が大きいのである。 陶磁器や掛け軸、はたまた古いおもちゃなどと同じく、その値付けに対し納得した人が購入するわけであり、「いくらで売るか」は売る側に主導権があるといってもいいだろう。 また、これはあくまで聞いた話であり未確認情報ともいえるのだが、ディーラーが展示車や新車として車両を仕入れる際には、一般販売用に仕入れるときより仕入れ価格はかなり安くなるという話も聞いている。つまり、中古車としての値付けはあくまで一般販売用の車両価格がベースとなるが、展示や試乗車は実際の仕入れ価格はそれより安くなっているので、そのような流れで高年式中古車となった場合には、販売して得られる利益は新車を売るよりはるかに多いのである。 しかし、中古車販売には「古物取り扱い」の免許が必要となるので、取り扱い免許をもたないケースの多いセールスマンは、あくまで中古車販売の仲介者的役割を担うだけなので、ディーラーとしては利益に貢献しても、セールスマンの収入にはほとんど影響しないそうだ。 「新車を売るだけでは生きていけない」。これは何も日本の新車販売業界だけの問題ではなく、アメリカでもとっくにそのフェーズに入っている。中国でも政府が中古車販売を国内だけではなく、海外にも広げようとしているほど。 軽自動車の世界では、ラインオフされるとそのままディーラー名義などでナンバーだけ取得して中古車市場に流れる「届け出済み未使用中古車」が、どのブランドでも多く流通している。これは工場稼働率の維持や新車販売台数の上積みなど狙っているところでは少々異なっているが、登録車でも、そして中古車展示場をもたない純粋な新車販売ディーラーの店舗であっても、とくに高年式中古車というものが軽自動車の未使用中古車並みにとまではいかないが、今後さらに目立ってくるかもしれない。
小林敦志