注目が利益に…「アテンションエコノミー」の弊害か つばさの党、動画は次第に過激化
衆院東京15区補欠選挙を巡る選挙妨害事件で、公選法違反容疑で再逮捕された政治団体「つばさの党」代表の黒川敦彦容疑者(45)らは、動画配信をしながら、他陣営の選挙カーの現在地情報を視聴者にリアルタイムで募り、追跡していた。黒川容疑者らが公開した動画は補選期間中の12日間だけでも約40本に上った。内容も次第に過激化しており、これを歓迎して「投げ銭」と呼ばれる送金をする視聴者もいた。専門家は、人々の注目や関心を集めて経済的な利益につなげる「アテンションエコノミー」が引き起こす弊害が出ていると指摘する。 【図で解説】「アテンションエコノミー」動画視聴者とのやり取り通じて過激化か 「ヘイヘイヘイ」「売国奴、売国奴…」 テンポの良いリズミカルな口調で、他の候補者らを罵倒する音声が、つばさの党の選挙カーから繰り返し流される。 黒川容疑者らはその一部始終を動画で撮影し、視聴者にリアルタイムで配信。主なプラットフォームは、ユーチューブだ。 選挙期間(4月16日から投開票前日の27日)のライブ配信動画は1日平均3本以上にものぼり、10時間を超す長時間の動画もあった。 ■「ビジネスに」 「選挙期間中に行動をエスカレートさせていったのは間違いない」 捜査関係者は、黒川容疑者の妨害行為の変遷について、こう分析する。 黒川容疑者らが、他陣営の選挙カーを追跡する「カーチェイス」と称する行動を最初にとったのは、4月17日だ。その際はつばさの党から出馬した根本良輔容疑者(29)が、マイクを使った肉声で罵声を浴びせていた。一方、20日には音声を録音で流し、リズミカルな語調にしたり、より過激な内容にしたりと手法を洗練させていった。 動画の中では、「(その時点の視聴者数が)5000人を超えています!」などと興奮した様子も。根本容疑者は「広告収入が増えているので配信をビジネス化したい」と意気込んでいた。 ■「収益化制限を」 「アテンション(注目)」という言葉を冠して使われるアテンションエコノミーと呼ばれる概念では、情報の優劣ではなく、関心を集めるかどうかが経済的な価値を持つとされる。ユーチューブやX(旧ツイッター)など、動画の再生数や投稿のインプレッション数(表示回数)などに応じて現金が支払われる仕組みがこれに当たる。 6月20日告示、7月7日投開票の東京都知事選では、出馬に必要な資料を都選挙管理委員会に受け取りに来た陣営が60以上に上っている。そのため、今回は過去最多の立候補者数となった令和2年の22人を大幅に上回る乱立選挙となる恐れがある。多くは知名度向上や、注目を集めて収益につなげる狙いがあるとみられている。