「倍速老化」とはいったいなんなのだろうか

　疲労や衰えを急に強く感じるようになった、あるいは病気や不調、痛みが急に悪化した──。こうした現象に心当たりがある人の体内では、一般的な老化とは一線を画した老化が静かに進行しているケースも。 【画像】『倍速老化』（サンマーク出版）を執筆した医学博士・飯沼一茂さん 　輸血によるC型肝炎感染の撲滅に大きく貢献し、世界的な評価を得た医学博士・飯沼一茂さんはそれを「倍速老化」と名づけた。では、そもそも老化とはいったいなんなのだろうか。飯沼さんが今後、医学の主役となるといわれる免疫の最新知見をまとめた新著『倍速老化』（サンマーク出版）より一部抜粋、再構成してお届けする。

教えてくれた人

飯沼一茂さん 医学博士。純真学園大学客員教授。日本機能性免疫力研究所代表。 1948年生まれ。1971年立教大学卒業後、ダイナボットRI研究所（現:アボットジャパン）入社。1987年大阪大学医学部老年病医学講座にて医学博士取得。1995年、米国アボットラボラトリーズ・リサーチフェロー。2008年よりアボットジャパン上級顧問。2010年より国立国際医療研究センター・肝炎免疫研究センター客員研究員。2012年から純真学園大学客員教授。 ホルモン、腫瘍マーカー、感染症マーカーの測定法の開発に多く携わる。特に、C型肝炎マーカーの開発によりC型肝炎の輸血による感染を撲滅し、世界的な評価を得た。そのほか、HIVマーカーの測定法開発やエイズ撲滅のボランティア活動を積極的に行っている。

そもそも老化とはいったい何なのか

　人体の老化は20歳を過ぎたころから始まります。多くの生物と同じように、生殖に適した時期をピークに衰えが始まるからです。では、その体内では、どんなことが起きているのでしょうか。 　まず、一つひとつの細胞の遺伝子が損傷したり突然変異したりする数が増えます。すると細胞内のエネルギー工場であるミトコンドリアが弱ってしまう。さらに、体に不要なタンパク質が蓄積するなどして、活動のペースが少しずつ遅くなる「細胞の老化」が生じます。それらが積み重なって内臓や皮膚などといった組織の機能も落ち、完全な活動停止（死）に向かうという流れです。 　言葉にすると、人生がいかにかぎられた時間しかないか意識せざるをえなくなりますが、その進行は、ごくわずかゆえ通常は気づきません。ただし老化が始まり5年、10年と過ぎると、筋力や体力、神経伝導速度、肺活量の低下などを実感しがちに。疲れやすくなったり肌の衰えが見られたり、あるいはケガが治りにくくなったりもします。 　この老化の速度を決めるのは、生まれつきの個体差と体内環境です。基本的に前者は変えられないため、後者をコントロールしようとするのが、いわゆる老化対策と呼ばれるもの。糖化や酸化といったキーワードをご存じの方も多いと思います。