フランス発祥のスポーツ「パルクール」普及に注力 石沢さん(青森・五所川原市出身)
すばやく壁を登り、軽々と障害物を跳び越え、空中で体を回転させるフランス発祥のスポーツ「パルクール」。青森県五所川原市出身で仙台市に住む石沢憲哉(かずや)さん(37)は、日本パルクール協会副会長として競技の普及に力を注いでいる。昨年10月には日本代表チームのコーチにもなり、翌11月の世界選手権で代表選手らをサポートした。2028年のロサンゼルス五輪で種目採用されることを願い、「五輪でも代表のコーチに」と夢を描く。 仙台市の北隣・宮城県大和町に、石沢さんが運営するパルクール教室「JUMP&LEAP(ジャンプアンドリープ)」がある。広さは200平方メートルほど。建物の中には単管パイプを組んで造った手すりや木製の大きな壁、障害物などが並ぶ。東北地方最大級の屋内パルクール練習場だ。 ここに仙台市などから小、中、高校生ら約100人が通い、練習に励んでいる。 子どもたちは石沢さんに質問したり、励まされたりしながら、目標とする動きの習得に熱心に取り組んでいる。 「パルクールはもともとは競技ではなく、自分を鍛えるトレーニング。『運動ができる』だけでなく、『人間的な強さ』を身に付けてほしいと思っています」と石沢さんは話す。 高校を卒業後、専門学校を経て作業療法士となった石沢さん。パルクールとの出合いは21歳の時で、ユーチューブの映像を見たのがきっかけだった。当時住んでいた盛岡市に社会人チームがあるのを知り参加、公園などで練習を重ねた。 東日本大震災を機に「やはり自分がやりたいことを仕事にしたい」との思いが募り、パルクールを指導する任意団体「SENDAI X TRAIN(センダイエクストレイン)」を仙台市に設立した。16年には会社化。教室のほか、宮城県内各地で開かれる体験会などに出張し、魅力を伝えている。また、自身も選手としてアジア大会などに出場している。 既に五輪競技となったスケートボードなどと同じ「都市型スポーツ」のパルクール。ただ、日本での競技人口はまだ少なく「西日本ではかなり盛んだが、東北では20人ほど」(石沢さん)に過ぎないという。 しかし、24年11月に北九州市で開かれた世界選手権では、フリースタイル男子で塩幡睦大選手が銀メダルを獲得し、大きくアピールした。コーチとして代表選手たちを支えた石沢さんは「日本選手は動きの精度が高く、世界でもトップクラス。世界で戦える競技になると思う」と力強く語る。 コーチとして五輪に参加することは、闘病中の父・和夫さん(68)=五所川原市在住=のためにもかなえたい夢だという。そして、まだ実現していない青森県での指導も夢の一つ。「要望があれば、ぜひ青森で教えたい。やはり地元だし、貢献したい。アスリートを目指したい子がいたら支援させてほしいです」と石沢さんは笑顔で話す。 ◇ パルクール フランスの軍事トレーニングを起源とする都市型(アーバン)スポーツ。走る、跳ぶ、登るなどの動作で障害物を越えながら移動する。体操の新種目に位置付けられる競技では、さまざまな障害物が置かれたコースが設定される。主な種目はゴールまでの速さを競う「スピード」と、技の難度や出来栄えを競う「フリースタイル」。2022年に東京で第1回の世界選手権が開催された。