欧州日本人「株上げた3人」「期待外れ3人」は? 森保ジャパンCB大飛躍…元新潟の技巧派は苦難【コラム】
シュミット、林は新天地で思いどおりのシーズンを送れず…
ボトム3の1人目はシュミット・ダニエル(ヘント)を挙げざるを得ない。昨夏にフランス1部メスへの移籍が目前で破談に。次の移籍期間までの半年間をシント=トロイデンでベンチにも入れず過ごしたなか、昨冬にクラブと双方合意の契約解除をしたうえで同じベルギーの名門ヘントにフリートランスファーで加入。しばらくゴールマウスを守ったが、2-4で敗れたスタンダール・リエージュ戦(第28節)を最後に出場から遠ざかった。プレーオフ2で、すでにUEFAカンファレンスリーグ出場が確定していた5月18日のスタンダージュ・リエージュ戦で11試合ぶりの出場機会に応えて4-1の勝利を支えたが、来シーズンは再飛躍の年にして、生まれ故郷で開催される北中米ワールドカップに向けて代表復帰につなげてほしい。 新天地の飛躍が期待されたFW林大地(ニュルンベルク)にとっても、苦しいシーズンとなった。ベルギー1部のシント=トロイデンからブンデスリーガ2部に期限付き移籍した林だが、なかなかゴールを奪えないままアキレス腱を負傷。復帰後のヘルタ・ベルリン戦(第10節)で得点するなど復活の予感を漂わせたが、怪我の再発で離脱。終盤戦で復帰したが、第31節のカールスルーエ戦で膝を負傷して、シーズン残りの欠場が決まった。 1部昇格を目指したニュルンベルクは12位に終わったが、得点力不足が主な理由であることは間違いなく、得点源になるはずだった林の長期欠場とパフォーマンスは非常に痛かった。地元の報道によると、買取りオプションは行使される可能性はかなり低い。その場合、契約を残すシント=トロイデンに復帰するのか、新たな移籍先を探すのか。ポテンシャルは間違いないだけに、フルシーズン戦えるコンディションを整えて、次のチャレンジに期待したい。 23歳の本間至恩(クラブ・ブルージュ)も大きな飛躍を期待していた選手の1人。プレーオフでの奇跡的な快進撃でベルギー王者に輝いた名門クラブにおいて、最終節はベンチから優勝の瞬間を見届けた。アルビレックス新潟から加入した昨シーズンはセカンドチームのクラブNXTで10番を背負って猛アピール。終盤戦でトップチームに昇格して、プレーオフで記念すべき初得点も決めた。しかし、今季は得意の左ウイングが激戦区で、なかなかトップでのチャンスを得られなかった。 冬には地元メディアで移籍の噂も伝えられていた本間。今年3月にはNXTを指揮していたニッキー・ヘイエン監督が暫定的に昇格したが、序列が大きく変わることはなかった。そんななか、町田を擁するユニオンSGとのベルギーカップ準決勝で、途中出場から短い時間で多彩な妙技を見せたことが話題を集めた。欧州の名門で、戦術的なタスクのハードルは低くないと見られるが、やはり本間が持つ類まれな攻撃センスを発揮する姿は見たいところ。来シーズンはベルギー王者として、再びCLにも挑むシーズンになるだけで、キャンプからしっかりとアピールしてもらいたい。 [著者プロフィール] 河治良幸(かわじ・よしゆき)/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。
河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji