養殖トリガイのコンテナの入れ替え作業をする川﨑さん。今年は高水温の影響で死んだ貝や成長の鈍い貝が多いという（京都府舞鶴市・舞鶴湾）

　京都府沖合の8月の表層平均水温が25・6度と、1964年の観測開始以来、最高値を記録したことが府の調査で分かった。丹後半島の沖合で暖流による渦が発生したとみられ、研究者は生態系への影響を懸念する。舞鶴湾でも高温となり、養殖のトリガイが死滅する被害が出ている。 【写真】異変の影響で死んでしまったとみられるトリガイ 　府の表層平均水温は、若狭湾に浮かぶ冠島沖8キロから50キロ離れた4地点での水深0～50メートルの平均値で、府の観測船「平安丸」が測定している。今年8月の25・6度は平年値（1991～2020年）より2・5度、昨年比で1・2度高かった。 　日本海の水温を分析する水産資源研究所新潟庁舎の井桁庸介主幹研究員は「日本海全体の水温上昇が反映されたのではなく、丹後半島周辺で対馬暖流による暖水渦が発生した可能性が高い」とみる。暖水渦は、暖流の流量の増加や接岸が発端とされる。流量の増加は地球温暖化など、気候変動の影響を受けている可能性があるという。 　高水温について、京都大舞鶴水産実験所の益田玲爾教授は「魚は海水温が25度を超えると食欲が落ち、30度で不調をきたすものもいる。海の浅い所で魚が少なくなり、海底の生き物が死んでしまう」と指摘。「海藻食が多い南方系の魚が増えている。海藻が減る可能性もある」と懸念する。 　舞鶴湾では養殖のトリガイが死滅したり、成長が鈍ったりしている。トリガイは府海洋センターの稚貝を使って7月から漁業者が育て、いかだからコンテナに入れて海中につり下げる。同センターによると、トリガイの耐水温の限界は29度だが、8月中旬の表層海水温は30度を超えた。 　舞鶴とり貝組合の川﨑芳彦代表（71）は「約3割のトリガイが死んだ」とし、「今夏は猛暑が続き、雨も少なかった。5割以上、死んだと話す漁師もいる。育ちも悪く、今後が心配だ」と不安を募らせる。 　沖合の高水温が続けば11月に解禁されるズワイガニ漁にも影響しそうだ。府漁業協同組合丹後支所の寺田直彦支所長は「海底の水温は2～3度なので表層水温が高いと、カニを網で引き上げる際に死んでしまう。水温が下がってほしい」と話している。