「旺盛なAIサーバー向け投資が続いている」 半導体装置各社7~9月期、好業績相次ぐ
半導体製造装置を製造・販売する主要上場メーカーの決算が出そろった。半導体市場はEV(電気自動車)シフトに一服感が見られ、スマートフォンやパソコン(PC)向けの本格回復が待たれる中、AI(人工知能)向けの需要が市場をけん引する。半導体製造装置メーカーの業績もAI向け需要が押し上げており、7~9月の業績は好調な企業が多かった。 【関連写真】半導体装置各社7~9月期業績一覧 ◆9カ月連続で上昇 半導体市場はAIデータセンター関連をはじめ、高性能半導体を軸に成長。日本半導体製造装置協会(SEAJ)の速報値によると、日本製半導体製造装置(輸出を含む)の販売額は1月から9カ月連続で前年同月を上回っている。 半導体製造装置メーカーの事業環境について、東京エレクトロンの河合利樹社長兼CEOは「WFE(半導体前工程製造装置)市場では一部、先端ロジック向け投資が控えられているが、それを上回る非常に強いAI需要に支えられている。足元では旺盛なAIサーバー向け投資が続いている」と説明。 SCREENホールディングス(HD)の廣江敏朗社長兼CEOは「SPE(半導体製造装置)はAI関連半導体が成長をけん引。金額ベースではサーバーの伸び率が非常に大きく、関連投資が非常に活発」と言及する。 ◆2桁増収が目立つ 旺盛なAI向けの需要を背景に、7~9月の業績では東京エレクトロン、アドバンテスト、SCREEN HD、ディスコ、東京精密、TOWAなど、2桁増収が目立つ。2025年3月期第2四半期(4~9月)決算では、この6社とKOKUSAI ELECTRICがいずれも増収増益だったほか、通期業績予想の上方修正も相次いだ。 一方、半導体やFPD(フラットパネルディスプレー)の露光装置などを精機事業として展開するニコン(3月期)は、7~9月の露光装置の販売台数が前年同期と比べてFPD用は増加したものの、半導体用は減少した。AIの進展を踏まえ、26年度にはデータセンター向け大型チップレット市場を対象に半導体後工程向けデジタル(直描)露光装置を投入する計画を持つ。 ◆露光装置が伸長 キヤノン(12月期)は、インダストリアル事業として半導体やFPDの露光装置などを製造・販売している。同事業の7~9月の売上高は、有機EL蒸着装置の売り上げの一部が10~12月に後ろ倒しとなり、前年同期比9.6%減。半導体露光装置はパワー半導体や生成AIの後工程向けに受注が伸びており、10~12月は81台の販売を見込む。 レーザーテック(6月期)の7~9月は減収。半導体関連装置の売り上げ計上は検収のタイミングにより四半期ごとに変動があると説明する。増収増益を計画している通期業績予想は修正していない。 半導体市場ではEVシフトに一服感があり、AI需要がけん引する一方、スマホやPC向けの本格回復も待たれている。アドバンテストのダグラス・ラフィーバ代表取締役兼経営執行役員兼グループCEOは「25年のスマホ市場の回復に希望的な観測を持っているが、今年度で回復の兆しがあるのはエッジAI。スマホとパソコンの両方で兆しが出つつあるが、置き換え需要を促すほどの力はまだない」と述べた。 ◆中国市場の動向注視 今後の懸念材料の一つに中国市場がある。中国は製造業で内製化を進めており、汎用(はんよう)半導体の製造装置では重要な市場だ。 国内装置メーカーの売り上げにおける中国のウエートは総じて高い。国際政治の影響を色濃く受けるケースであり、各社は今後の米中摩擦、対中規制の動向を注視している。
電波新聞社 報道本部