高齢者の悩みに朗報「便もれ」対応専用パッド登場、市場規模拡大の見通し
高齢者を中心に軽い便失禁(便もれ)で悩む人は多い。なかなか人に言えない身体の悩みだが、衛生用品大手ユニ・チャームの2万人を対象にした調査では、成人の5人に1人は軽い便もれや下着への便の付着を経験しているという。ユニ・チャームはこうした軽度の便もれの悩みに対応する手のひらサイズの「ライフリー さわやか 軽い便モレパッド」(男女共用・10枚入り、税込498円)をこのほどネット通販限定で売り出した。13センチほどのサイズのパッドを下着につけることで、急に出る便の広がりを防ぎ、下着を汚さないようにしたり、特有の臭いを抑えたりする。
尿もれについては関連の製品も多く、一般の理解が進んでいる面があるが、便もれについてはまだそうしたレベルには十分達していない。軽い便もれの原因は、尿もれと同じく、骨盤底筋(括約筋)のゆるみから起こるものが多く、尿もれの人は便もれにもなる可能性が高いという。 ユニ・チャームによると、個人差はあるものの、便もれ症状が起きるきっかけとなるのは、「急な便意に間にあわなかった」「おならをした時」などのケースだ。痔の手術による肛門括約筋機能の低下や、アルコール飲料による下痢、仕事上のストレスによる「過敏性腸症候群」などが原因で悩んでいる人は少なくない。中には20代や30代の若い世代もおり、高齢者だけの悩みではなくなっている。 大半のケースが下着に便が少量つく程度のもれだが、「知られたくない」「恥ずかしい」といった感情を引き起こし、日常生活に影響が出たり、外出や人との交流を避けることにもつながりかねない。「クオリティ・オブ・ライフ」(生活の質)が低下する懸念もあり、当事者にとっては深刻な問題だ。
ユニ・チャームのアンケートでは、便もれに対処するにあたって、過半数の人が「特に何も使っていない」と回答した。もれた便をそのままにしておくと、便に含まれる消化酵素が肌につくことで炎症を引き起こすほか、ティッシュなどの代用品では消臭効果が低いなどデメリットも多いという。こうした事情も踏まえて、同社は軽い便もれに上手に対処してもらおうと、専用のパッドを国内で初めて製品化して売り出した。 高齢化の進展もあって、パンツ型やパッドなど大人の紙おむつ市場は拡大傾向を示している。直近の3年間で10%程度市場規模(金額ベース)が増えているという推計もあり、中でも軽度用と中度用の成長が目立つという。また男性向けのパッドや薄型パンツが、今後需要が伸びる成長分野と目されている。ちなみに軽度の尿失禁対応製品の市場は、20年ほど前と比べて40倍の約370億円規模にまで成長しているという。 6月下旬、横浜市でユニ・チャームが開いたセミナーには約200人の聴衆が集まり、同社の排泄ケア研究所の看護師や介護福祉士が排泄トラブルの予防や対処方法を紹介した。参加者の年齢は70歳代が中心だったが、「この年齢になると誰でも経験することだが、最近はこうした専用のものあってよい」「便もれは意外と多くの人が経験していると知り、驚いた」などと反応も上々だった。 長寿社会においては、誰もがこうした問題に直面する環境にあり、ユニ・チャームに限らず、今後、他メーカーの市場参入も予想される。より快適な生活の実現に向け、メーカー間の競争も熱を帯びそうだ。 (3Nアソシエイツ)