「青春はもう贅沢品なんじゃないか」『ちはやふる』と正反対の競技かるた漫画を描く理由
2008年に「BE・LOVE」で連載をスタート。2022年に50巻で幕を閉じた青春漫画の金字塔『ちはやふる』。競技かるたに情熱を注ぐ高校生たちの成長や友情、恋愛、瑞々しい感性は多くの人を魅了し、現在までに累計2800万部を突破するヒットとなりました。 【マンガ】広瀬すず主演で映画化も話題! 前作の『ちはやふる』をもう一度読む! 完結から1年後の、2023年12月からスタートした続編が『ちはやふる plus きみがため』です。主人公は、千早(ちはや)たちが卒業した後の瑞沢高校かるた部の新入部員、長良 凛月(ながら りつ)。前作と同じ題材でありながら、まったく違う角度から競技かるたの世界を描いた新連載をスタートした経緯や、作品に込めた思いについて作者の末次由紀先生にお話を伺いました。 ▼『ちはやふる plus きみがため』あらすじ 『ちはやふる』待望の続編ストーリー、開幕!! 舞台は千早たちが卒業したあとの瑞沢かるた部。競技かるたの高校全国大会優勝を目指す長良凛月(ながら りつ)だけど、千早や太一が抜けたあとの瑞沢はA級選手がたった一人で……。ひたむきにかるた、そして人生に向き合う凛月と、仲間の成長物語!
番外編から生まれた新たな主人公
――『ちはやふる』の続編となる、『ちはやふる plus きみがため』(以下、『きみがため』)の1巻がいよいよ発売になりました。改めて、新連載スタートまでの経緯を教えていただけますでしょうか。 「BE・LOVE」本誌や、『ちはやふる』の50巻を読まれている方はご存知だと思いますが、新連載の主人公である長良凛月は『ちはやふる』の番外編「はなのいろは」に登場しているんです。番外編の舞台は千早たちが卒業し、菫(すみれ)ちゃんが二代目キャプテンとなった瑞沢高校。凛月は新入部員の一人という役どころでした。 これは感覚的な話になりますが、番外編で凛月を描きながら父子家庭で洗濯や掃除、家事がなかなか行き届かない状況であることが彼の後ろに見えました。 「ああ、言いたいことがたくさんある子だ……」と感じたときに、スピンオフだけで終わらせることができない気持ちになったんです。それで番外編の執筆から一年ほどかけて彼の話を聞き、豊かなものが描けそうだと感じたため、続編を始めることになりました。