セル・イン・メイ封じる記録的自社株買い、日本株再浮上を促す可能性
損保大手6兆円超の政策保有株ゼロへ、MS&AD29年度末までに
東海東京インテリジェンスラボの鈴木誠一チーフ株式マーケットアナリストは「持ち合い解消は売る側にとっては利益になる」ため、持ち合い株の売却資金を使って自社株買いに充てられると説明。売却される側も、自社株を買い取る傾向があると言う。
日本株市場では、自社株買いを行う企業は今や重要な買い手だ。大和証券によると、日本銀行が21年度に指数連動型上場投資信託(ETF)の買い入れ額を減らして以降、企業が実質的に日本株最大の買い主体となっている。阿部健児チーフストラテジストは、企業は「最も安定的な買い手でもあり、日本株の底堅さに寄与する」とみている。
実際、東証の投資部門別売買状況を見ると、企業の動向を反映する「事業法人」はTOPIXが年間で25%上昇した23年に4兆9012億円買い越し、買越額は海外投資家の3兆1215億円よりも多かった。
さらに、5月第2週から6月中旬にかけて事業法人の買いが増える傾向が過去5年間のデータで明らかになっている。これは、4月から5月にかけての決算発表や6月の株主総会に向け自社株買いの方針が示されるケースが多いためで、昨年もTOPIXは6月に7.4%上昇し、月間上昇率は最も大きかった。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大西耕平上席投資戦略研究員は、今年も6月にかけて自社株買いが増えれば、「日本の株式市場にとって次の回復ポイントになるかもしれない」と話す。大西氏によると、企業は株価上昇時に自社株買いを控えるため、4月に日本株相場が調整したことは総会前に自社株買いを行うインセンティブになるという。
みずほ証券とSMBC日興証券では、年末までに日経平均がそれぞれ4万2000円、4万500円に上昇すると予想。TOPIXと日経平均の年末予想値を2950ポイント、4万3500円としているBofA証券は企業の保守的な業績計画を理由に年末高のパターンになるとみている。