新入社員は「配属ガチャ」でなく全員「顧客対応」から始めてはどうか
IT企業の新人エンジニアも例外ではなく… なぜ、新入社員の最初の配属は全員セールスなどの「顧客対応」から始めればよいのか。それは、自分が入社した会社は顧客から何を求められているかを、顧客の生の声を聞いて知るためだ。自社が顧客から何を求められているかを知ることは、すなわち社会における自社の存在意義を知ることになる。顧客対応というのは、それぞれの会社の営業や販売、そして「お客さま相談室」などを指す。決して「きれいごと」ではない顧客対応の経験を通じて、自社がなぜ存在するのかを理解した上でそれぞれの部署に行けば、プロ意識も違ってくるだろう。その意識が根付けば、自らのスキルをさらに磨くようになる。期間は半年ほどが適当ではないか。ただし、研修ではなく、正式な配属として扱うべきだ。でないと、真剣に向き合わないからだ。 例えば、IT企業の新入社員の場合、理系はエンジニア部門、文系は営業や事務管理の部門など、最初から配属先が分かれるケースがほとんどだが、IT企業だからこそ一定期間は顧客対応を経験すべきだと、筆者は確信している。顧客が求めていることを的確に理解し、それをシステムとして実現するためには何が必要か。顧客そのものを知ることである。 顧客対応から始めるこの取り組みで最も大事なのは、会社側が新入社員に「なぜ、顧客対応の仕事から始めるか」を最初にきちんと理解してもらうように努めることだ。これこそは経営トップの仕事だと強調しておきたい。 新入社員が希望する仕事にすぐ就けることを、筆者は危惧する。それはたとえ専門の勉強をしてきた人間でもだ。会社に入って仕事をするとはどういうことか。働いて収入を得ることだけではない。働いて収入を得られるのは、社会で何らかの役に立っているからだ。 こうした考えは、これまで40数年、記者として活動してきた中で、多くの取材相手と議論を繰り返して培われてきたものだ。「君の言うことは理想論だ」ともよく言われた。だが、何のための会社か、何のための仕事か、ということを頭と心に叩き込まないと、自分自身の仕事人生が面白くならないのではないか。経営視点だけでなく、新入社員それぞれに向けて「本人ために」との思いで、今回の「一言もの申す」としたい。