なぜイマドキの新入社員は「おはようございます」が言えないのか…SNSに広がる「あいさつ不要論」への違和感
■子供の発達には「変化」も重要 「親友」ということばを簡単に使ってしまう怖さは、人とのつながりを極端に狭めることに直結する点にあります。わかりやすく言えば、特定の人間以外と話す場面が減ることを意味します。 交友関係が安定するのは心地いいものです。心がおだやかになり、波風が立たない状況なのですから。親が子どもに「親友」ができることを望みがちなのも、安定を求める気持ちの表れなのです。 しかし、おだやかで波風が立たない環境というのは、子どもの精神的な成長にとって決して望ましいことだけではありません。 子どもの発達には「変化」も重要です。「安定」とは真逆の環境が求められるのです。安定は、それ以上の大きな進展を望めないということなのですから。 これは組織も同じでしょう。どのような人の集まりであっても、安定をめざすためには、人々のつながりを強めようとします。チームとして機能するようにするためです。 でも、同時に安定とは「停滞」をも意味します。次に大きく成長をするためには、あえて安定した環境を壊すことも必要でしょう。 だから、子どもを伸ばすためには、異なる人の考えや価値観を受け入れるという視点が欠かせません。 ■「多種多様な関わり」で価値観を広げる この「受け入れる」というのは、自分自身の考えを180度すべて変えるという意味ではありません。「こういう考えの人もいるのだ」と客観的に自分の考えを見つめ、視野を広げることです。 人は考え方や価値観が似ている人に惹(ひ)かれます。 同じ趣味や嗜好(しこう)が集まると、居心地がいいものです。話が合うのですから、自分自身が常に受け入れられているという感覚を覚えるでしょう。 でも、成長という観点から見ると、それだけでは足りないのです。 まして子どもは、発展途上の段階です。いっそうの成長を願うのであれば、積極的にさまざまな人との関わりをもたせることが大事になります。 そこに「話す」ということばの本質的な意味と価値が潜んでいるのです。 性別も年齢も国籍も関係なく、人との接点を増やすことが求められます。意識していなかった自分自身の新たな一面に気がつくこともあるでしょう。 固定化された親友の存在だけでは、価値観は決して広がりません。交友関係から、親は子どもが変化のきっかけを失う危険性を感じとらなければいけないのです。 ---------- 岸 圭介(きし・けいすけ) 早稲田大学系属早稲田実業学校 初等部 教諭 1979年、神奈川県横浜市生まれ。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業。早稲田大学大学院教育学研究科教科教育学専攻博士後期課程修了。専門は国語科教育学、博士(教育学)。藤子・F・不二雄による『ドラえもん』(小学館)を小学校の教科教育の観点から編集した『学年別ドラえもん名作選(全6巻)』シリーズの監修及び解説の執筆、『ドラえもん 大ぼうけんドリル』シリーズの監修を務める。 ----------
早稲田大学系属早稲田実業学校 初等部 教諭 岸 圭介