「建国記念の日」が「2月11日」である理由を知ってますか…日本人が意外と知らない「驚きの真実」
皇紀に込められた思い
もちろん、神話上のことだから、確たる根拠があるわけではない。ただ、それは西暦も同じこと。本当にキリストが西暦元年に生まれたかははなはだ疑わしい。 とにかく重要なのは、神武天皇の即位日が確定したことで、日本独自の紀年法が可能になったことだ。たとえば、今年2023年(※執筆時)は、660を足して、皇紀2683年に換算できる。 もっとも、結果的に皇紀が広く使われたわけではなかった。戦前、広く使われたのは西暦もしくは元号だった。それでも、皇紀は国威発揚にはもってこいだった。西暦より660年も長いため、日本の建国がいかにも古く感じられるからだった。 同じような紀年法は、近隣の国にも存在する。清朝の黄帝紀元、韓国の檀君(だん くん)紀元がわかりやすい。いずれも伝説上の君主をもとにしており、檀君紀元だと2023年はなんと4356年にもなる。 また皇紀は兵器の名称にも使用された。 日本海軍の有名な戦闘機にゼロ戦がある。百田尚樹の小説『永遠の0』、宮崎駿監督の映画『風立ちぬ』などにでてくるあの名機だ。正式には零式艦上戦闘機というが、このゼロは正式採用された年、すなわち皇紀2600(西暦では1940)年の末尾から取られている。 このように皇紀は、象徴的な場面で効果的に使われた。現在でも、神社の紀年法は皇紀のばあいが多いので、初詣のときなどに確認してみるとよい。 さらに連載記事<戦前の日本は「美しい国」か、それとも「暗黒の時代」か…日本人が意外と知らない「敗戦前の日本」の「ほんとうの真実」>では「戦前の日本」の知られざる真実をわかりやすく解説しています。ぜひご覧ください。
辻田 真佐憲(文筆家・近現代史研究者)