<大阪北部地震から1年>被災後も営業しながら再建した銭湯店主「改めてがんばらなアカン」
<大阪北部地震から1年>被災後も営業しながら再建した銭湯店主「改めてがんばらなアカン」
1年前の大阪北部地震で被災した高槻市の銭湯、湯の華温泉。銭湯の休業が相次ぐ中、店主は悩んだ。早く修理をしたいが、建設業者には工事依頼が殺到し、職人は集まらず資材も足りない。ベテラン店主が選んだのは、顧客の理解を得て営業を続けながら、部分別に修理を積み重ねていく持久戦改修だった。
応急修理を施して営業しながら部分的改修を継続
湯の華温泉の開業は1969年。店主の池田義雄さん(76歳)、妻の壽惠子(すえこ)さんはともに石川県出身で、長男喜輝さんと家族3人で切り盛りしている。正月以外はほとんど休まない。半世紀におよぶ堅実な営業姿勢で地域にしっかり溶け込む。 地震による被害は浴室部分の大屋根の損傷をはじめ、脱衣場と浴室の接合部分の亀裂、壁面のひび割れなど。浴室屋根の全面張り替えを中心に、大小の工事に約700万円の改修費を投入。工事はおおよそ7回に分けて、断続的に延べ20日間ほど費やして10月末ごろに完了した。「一部損壊」と認定されたため、公的助成は少なく、大半が自己資金での再建となった。 被災当日は水道の断水で休業。番台上の大きな窓ガラスが揺れの圧力でたわんで破裂した。脱衣場に飛び散ったガラス破片を見逃すことなくひとつずつ拾い集めた。翌日には水道の復旧に伴い、早くも営業を再開。「店を開けて」の顧客の声に応えた。以来、工事完了までに店を閉めたのは、ほんの数日間だけ。普段通り極力休まずに再建を終えたわけだ。池田さんが振り返る。 「建築業者に1カ月間店を閉めるからすべて直してほしいといっても、引き受けてくれない。あちこちに同じように早く修理をしてほしい人たちがいますから、うちだけを優先してと無理は言えません」 職人が集まらず資材も足りない。どんな方法なら修理が可能なのか。建築業者と被災箇所を点検しながら話し合う。 「業者は営業再開に必要な修理箇所は真っ先に直してくれた。そのうえで、ここはこんな方法で応急修理をしておけば、しばらくは持つはずと、きめ細かく対応してくれました」(池田さん) 連続休業による一括改修ではなく、応急修理で営業を継続しながら段階的部分的に修理していく持久戦方式を選んだ。