「おばさんが幸せな社会にしたい」不当な逮捕を乗り越え“フェミニズム”に生きる女性作家
津田塾大学を卒業し、アダルトグッズ販売へ。女性による女性のための経済活動をするには、さまざまな困難も。不当な逮捕、祖母の死を乗り越えて軽やかに生きる北原さんの半生を振り返る。 【写真】「勉強どころじゃない」と何かと忙しかったという大学時代の北原さん 今から100年近く前の昭和の時代、日本初の女性弁護士となり、後に裁判官、裁判所長となった三淵嘉子をモデルとした連続テレビ小説『虎に翼』が話題となっている。伊藤沙莉演じる主人公の猪爪寅子は、女性が置かれる立場に疑問を感じたり、世の中の理不尽にぶち当たると「はて?」と口にし、納得するまで問題に取り組もうとするパワフルな人物だ。
作家でフェミニストの北原みのり
このドラマを楽しみ、時に涙しているというのが、女性が安心して使えるセクシュアルヘルスグッズやフェムテックの商品を扱う会社を経営する、作家でフェミニストの北原みのりだ。北原も子どものころから疑問や理不尽にぶち当たると、同じように違和感を抱いていたという。 「私が普段、仕事で使っている名前の“北原”は母の旧姓なんです。戸籍上は渡邉なんですけど、小学生のときにクラスに4人も渡邉がいたので、どうして北原にしなかったのか聞いたんですね。すると父が『俺はじゃんけんで決めてもよかったんだけど、お母さんが渡邉になりたいと言ったんだ』と言って、それをしばらく真に受けてたんですけど……よくよく考えたら変ですよね、男と女は対等なはずなのに。そんな父は教育者で左翼思想の人。リベラルなことを言うんだけど、なんかいつもどこか威張っていて、矛盾してるな、ウソだなって思っていました」 母の旧姓を使う理由─その根本には北原の母方の祖母の存在がある。『虎に翼』の寅子のひと回りほど下の世代生まれの祖母は結婚せず、ひとりで北原の母を産み、育て上げた。祖父に当たる人物はある会社の創業社長で、祖母はその愛人だった。 「祖母は20歳で母を産んで、母は私を25歳で産んでくれたので、私は祖母が45歳のときの孫なんです。母は祖父にすごく可愛がられたそうで、私も子どものころに1度会ったことがありますけど、年がずいぶん上のおじいさんでした」 戦後すぐの生まれの北原の母はしっかりとした教育を受けたが、大学進学の際に理系学部へ行くことを反対され、文系大学へ進学。そこで北原の父と出会い、結婚した。 「それが原因で、祖父から勘当されてしまったそうです」