タデイ・ポガチャルが歴史的大勝 ダブルツールへ大きく前進|ジロ・デ・イタリア
驚異のステージ6勝、最後の上りではファンサービスも
圧倒的勝利を締めるには、やはりその力を誇示することが一番だ。 今大会最後の山岳ステージとなった第20ステージ。前々日はスプリントで終え、前日は大逃げが容認されたレースは、この日再びの頂上決戦。 2回上る1級山岳モンテ・グラッパの最後、再度のチャレンジに出たペリツァーリが逃げから独走に持ち込んだ一方で、メイン集団ではリーダーチームのUAEチームエミレーツが着々とコントロール。とりわけラファウ・マイカ(ポーランド)の牽引はアタック級の力強さで、個人総合3位を守りたいトーマスが徐々に引き離されるほど。同2位のキープを図るマルティネスらは耐えてきたが、フィニッシュまで36kmを残したタイミングでのポガチャルのアタックには誰も対応できなかった。 こうなるとレースの流れは完全に“王者”のもの。ペリツァーリもパスしたポガチャルは、フィニッシュまでの長く、美しいウイニングライドへ。モンテ・グラッパを上りながら観客の声に応える“サービス”までしてみせ、その後のダウンヒルも問題なくクリア。あとはもう、フィニッシュへマリア・ローザによる勝利の行進だ。 このステージだけで2位以下に2分7秒の差をつけ、総合タイム差としては2番手のマルティネスに9分56秒という驚異的な大差に。最後の1ステージは首都ローマでのパレード走行とスプリント決戦が暗黙の了解だったこともあり、第20ステージ終了段階でのポガチャルのジロ制覇が確定的となった。
ツールでは“ビッグ4”そろい踏み、ジロ以上の激しい戦いへ
最終・第21ステージでは、全身バラ色に身を包みパレード走行に臨んだポガチャル。チームメートもピンクのアイウェアと、肩にマリア・ローザカラーを施したスペシャルジャージを着用し、ポガチャルの、そしてチームの勝利を誇示した。 ポイント賞のマリア・チクラミーノを2年連続で獲得したジョナサン・ミラン(リドル・トレック、イタリア)、ヤングライダー賞のマリア・ビアンカとなったアントニオ・ティベーリ(バーレーン・ヴィクトリアス、イタリア)とも健闘を称え合いながら、ジロ2024の終幕を祝った。 終わってみれば、前述の総合タイムでの大差に加え、ステージ6勝。驚きのジロ出場宣言から数カ月、例年よりもレース出場数を絞り、グランツールにフォーカスするスケジューリングでまずは1つ目のタイトルを手にした。 その走りは往年の名ライダー、ベルナール・イノー氏にしても評価の高いものだったという。1982年と1985年にジロとツールの「ダブルツール」を果たしているイノー氏の目には、勝利に貪欲なポガチャルの走りは自身の現役当時に重なるものがあると映ったよう。「彼は生まれながらのレーサーだ」と述べ、今季の調整方法から見てもダブルツールは可能だとしている。 次なる目標は、3年ぶりのツール制覇。それは、ジロとのグランツール2冠「ダブルツール」達成を意味する。 4月に開催されたイツリア・バスクカントリーでの落車負傷で戦線を離脱しているヨナス・ヴィンゲゴー(ヴィスマ・リースアバイク、デンマーク)がトレーニングを再開し、ツールに向け本格的に調整を開始。同レースで負傷していたレムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ、ベルギー)とプリモシュ・ログリッチ(ボーラ・ハンスグローエ、スロベニア)は、ツール前哨戦のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネで直接対決が見込まれる。 これら状況を喜び、ツールでの対戦を待ちわびているポガチャル。自身は数日間休息をとったのちに、ツールに向けて再始動。高地トレーニングでフィジカル面を整えていくという。 ツール本番ではこの“ビッグ4”がそろい、ジロを超える激しい戦いとなる。いま一番勢いのあるポガチャルがそのまま突き進むのか、はたまたツール一本に絞って調整を進めている他の3人のうちの誰かが上を行くのか。いや、新たな刺客も…。ジロが終わってもなお、ロードレースシーンには尽きない楽しみが待っているのである。 TEXT:福光俊介 PHOTO:LaPresse
Bicycle Club編集部