パ・リーグは、就任1年目の小久保監督が率いるソフトバンクが4年ぶりに覇権を奪回した。2位に11ゲーム差をつけての優勝。首位と15・5ゲーム差の3位だった昨季から、巻き返しを果たした理由を追った。 【一覧表】ソフトバンクの打撃部門上位

本塁打を放った山川（右）を迎える近藤。2人の存在感は抜群だった（4日）

　優勝を決めた135試合目まで4番を担い続けた山川が、打線の中心となった。西武からフリーエージェント（FA）権を行使して加入した右の大砲は、リーグでただ一人、30本塁打をクリアし、「できることを精いっぱいやった。（不調の時期も）打てるようにしっかりもがいたので、少しは成長できた」。苦しい試合で何度もチームを救う一発を放ち、選手からも「山川が打てば勝つ」と信頼を勝ち取った。

　昨季は柳田と近藤がタイトルを獲得したが、主力が左打者に偏った。対左投手のチーム打率は2割2分6厘と対右投手に比べて3分以上低く、その弱点を相手に突かれた。球団は課題解消の切り札として、不祥事で昨季を棒に振った山川を獲得。今季の対左投手のチーム打率は2割4分8厘に上がり、苦手意識は薄れた。

　開幕で柳田、山川、近藤と並べたクリーンアップも効果的だった。「柳田と山川をしのいでも、一番打ち取りにくい近藤がくる。ボディーブローのように効くはず」と小久保監督。走者がいても相手に山川との勝負を選ばせる状況を作った。さらに、山川は「ダメでも近藤がいる」と難しい球に無理して手を出さず、近藤は「（山川との勝負で）投手の集中力が落ちたところ」を狙って痛打を浴びせた。

　柳田が5月31日に、近藤は今月16日に、ともにけがで離脱したが、シーズンの大半で山川と近藤が存在感を放った。山川は5月22日に12号を放ってから7月2日まで本塁打が出なかったが、この間も4番の重みを知る小久保監督の判断で打順を動かさなかった。中軸がぐらつかないから「周りの選手の役割が明確になり、対応できた」と村松打撃コーチ。柳田に代わる3番の栗原は尻上がりに調子を上げ、柳町や正木が6番で勝負強さを見せた。

　投高打低の印象が強かったシーズンで、チーム成績は打率と得点、本塁打がリーグトップ。王貞治球団会長は「ホームランは試合の流れを変えるし、チームに勢い、勇気をくれる。（山川が）夏場に本来の力を発揮してくれたのが大きかった」と主砲の貢献をたたえた。（記録は優勝が決まった23日現在）