ウエストランド井口「老害中の老害ですよ!」全国放送の地上波初出演の壁となった『オンバト』常連のレジェンドコンビ
2022年の『M-1グランプリ』優勝以来、さまざまなバラエティで活躍するウエストランド・井口浩之。ツッコミはもとより、愚痴と文句を言わせたら右に出るものがいない口達者ぶりで、仕事は引きも切らない。その文句言いぶりゆえに見落とされがちだが、実はウエストランドはデビュー間もない頃からテレビで着実に結果を残してきた駿才でもある。これまでの芸人人生で井口が感じた、「THE CHANGE」とは――。【第2回/全5回】 ■【画像】ウエストランド井口が「老害」と憤るタイムマシーン3号の圧倒的に支持された「ONE PIECE漫才」 2010年夏、ウエストランドは現在の所属事務所であるタイタンの“預かり”になる。そして翌春、『オンバト+』(NHK)に挑戦する機会が回ってきた。1999年から続いた『爆笑オンエアバトル』は2010年3月に終了し、同4月から『オンバト+』にリニューアルしていた。 「この時期もまだネタ番組は全然なかったし、芸人になってからも『オンバト』に出るのが最初の目標でした。『オンバト』はオーディションがないんですよ。人によっては前説を一回やってから本番に呼ばれていたみたいですけど、僕らはそれもなかったです。あるとき、事務所の人から“『オンバト+』決まったよ”って言われて」 まず思ったのは、「とにかくオンエアを勝ち取らないと」という一点だった。 「勝てば絶対、次があるじゃないですか。勝ったのに次に呼ばれないってことはないと思うんで。だからもう『勝つしかない』って感じでした」
収録は2011年3月。東日本大震災の発生から間もない時期だった。 「震災の後、『オンバト+』が収録を再開する1回目だったんですよね。余震の心配もまだまだあって、けっこう大変な状況でした。台本を事前に提出して、少しでも震災を連想させるようなことはもちろん言っちゃダメだし、現場はピリついてましたね」 そもそも、震災とは無関係にウエストランドにとっては厳しい状況だった。 「事務所に入って1年も経っていない、最若手ですからね。お客さんはもちろん、一緒に出ている人も誰も僕らのことを知らないんですよ。その回で唯一知り合いだったのはラブレターズだけ。ほぼ全員から“誰だ、こいつ”って思われながらネタやって……しかもこの回、タイムマシーン3号が復活してきたんですよ! “ふざけんな、なんでだよ”って思ってました」 『オンバト』中期の常連としてならしたタイムマシーン3号は、2009年頃にいったん番組を卒業するも、2011年から再び出場するようになる。本サイトで取材した際、タイムマシーン3号の2人はこの頃のことを ーーー 関「周りからは“あれ? また出るの?”って言われました」 山本「老害ですよ、もう」 関「これはね、“嫌だった”という声が明確に届いております(笑)」 ーーー と振り返っていた。この話を伝えると、井口は「まさに僕らですよね」と憤る。 「老害中の老害ですよ! なんでまた出てくるんだ。番組的にも、なんとか盛り上げなきゃってことで昔のレジェンドを呼び寄せていたんでしょうけど」 ウエストランドの『オンバト+』初挑戦の結果は413KB(キロバトル)。10組中5位に滑り込み、目標通りオンエアを勝ち取った(2011年4月23日放送回)。ちなみにラブレターズはオフエア、タイムマシーン3号は堂々の1位だ。 「初めてだったんで、手応えがよくわからなくて。とりあえず“ギリギリ受かって良かった~”と思いましたよ。本当に誰も知らない、何もない中でオンエアを獲得できた。ある意味、これもひとつの転機ではありますよね。ここで負けたら何もなかった可能性もあるんで」 長年憧れた舞台であり、ウエストランドにとって記念すべき初めての全国放送の地上波出演でもあった。ところが、ここで思わぬ出来事が井口を見舞う。 文=斎藤岬 井口浩之(いぐち・ひろゆき) 1983年5月6日生まれ、岡山県津山市出身。中学・高校の同級生だった河本太と2008年にウエストランドを結成。『M‐1グラプリ 2022』優勝。現在のレギュラー番組に『耳の穴かっぽじって聞け!』(テレビ朝日)。WEBメディア「お笑いナタリー」にて「今月のお笑い」連載中。 斎藤岬
斎藤岬