今後、日本の「ダート王決定戦」は海外が主な舞台!? サウジカップで15億円を手にするのは?
そのうえ、サウジアラビア、ドバイといった中東圏での大レースでは、ダートの本場であるアメリカの超一線級の参戦が最近は少なくなりつつある。となれば、勝つチャンスはより大きくなる。海外競馬メディアの記者が語る。 「サウジカップでも、今はサウジアラビアの王族などが現役で権利を買ったアメリカの一流馬たちが参戦していますが、それ以外は中東への遠征を避ける傾向が見られます。そうなると今後、より日本調教馬の独壇場になっていくことは十分考えられますし、もしかするとサウジ王族からトレードのオファーが出てきても不思議ではありません」 こうした傾向から、日本ダート界のトップクラスの海外志向はより加速していくだろう。つまり今後、日本の真の「ダート王決定戦」は海外が舞台になる、と言ってもいいかもしれない。 さて、事実上の「日本のダート王決定戦」といった様相のある今回のサウジカップだが、今年から大きな変化がある。昨年までは粉砕した松のチップが混ぜられたダートだったが、今年はシーズン開幕前の昨年9月に混ぜ物のない砂に入れ替えられたのである。 ウシュバテソーロの手綱を取る川田将雅騎手は事前の馬場入りを経て、こう語った。 「昨年よりちゃんとしたダートになって、パワーの要る馬場になったと思います」 続けて川田騎手は、ウシュバテソーロにとって勝敗のカギとなるポイントについて触れた。 「ウシュバテソーロは今まで2ターンのコースで、最初の1~2コーナーを過ぎて向こう正面に入ってから『そろそろいくか』という競馬をしてきた。それが今回は、そうではなくてワンターン。それをウシュバテソーロがどう理解するか。気持ちが大事な馬なので、彼自身が走る気持ちを出してくれるかどうか」 他の日本調教馬の状況はどうか。デルマソトガケは輸送中に顔面を負傷してしまったという。 「誰も見ていないので断言できないけど、同じストールの馬に噛まれてしまったのか......」とは、同馬を管理する音無秀孝調教師。幸いにして腫れは引いたが、「精神的に馬を怖がるようになっていなければいいが......」と不安をのぞかせた。 また、本来は暮れの地方交流GI東京大賞典(12月29日/大井・ダート2000m)を使ってここに臨むプランだったが、爪の不安から昨秋のブリーダーズカップクラシック以来のぶっつけとなった。そのブリーダーズカップクラシックも休み明けで「3~4コーナーの反応が鈍かった」というだけに、懸念は増している。
レモンポップはいい状態を保っているが、陣営も認めるように1800mという距離が不安要素。さらに今回は、アメリカ勢に出脚の速い馬がそろった。それらに執拗にマークされる展開になると厳しいか。 一方、そのアメリカ勢のなかで有力なホワイトアバリオ(牡5歳)は万全の態勢。「(勝利したとはいえ)ブリーダーズカップクラシックの前は100%の出来ではなかった。今のほうが100%に近い」と、リチャード・ダトロー調教師も太鼓判を押す。 はたして、今年はどんな結末が待っているのか。日本調教馬が再び頂点に立ち、日本だけでなく、世界ナンバーワンのダート王として君臨することができるのか、注目である。
土屋真光●取材・文 text by Tsuchiya Masamitsu