つながり希薄化も息づく「助け合い」 日頃の人間関係が培う共助、都市部も地道に再構築を 備えあれ④互助力
大きな災害を経験したことをきっかけに、近所同士で助け合う「共助」の意識を高めているケースもある。平成29年7月の九州北部豪雨で被災し、犠牲者も出た福岡県東峰(とうほう)村では、近所同士での声掛けルールなどを定めた行動計画を作り、次の災害に備えている。
人口約1800人の東峰村では、豪雨で土砂崩れや河川氾濫(はんらん)が相次ぎ、3人が犠牲となった。復興支援に入った九州大大学院工学研究院教授(防災工学)の三谷泰浩(58)が指導し、まずは行政区ごとに村民同士で話し合い、過去の災害発生地点や老朽家屋などの災害リスクを記した「地区防災マップ」を完成させた。
さらに、災害時の避難先だけでなく、逃げるタイミングや近所の誰に声を掛けるかといった詳細なルールを定めた「コミュニティータイムライン」まで作成した。三谷は「地域の誰が手助けが必要で、誰が声を掛けるのかといったルールをあらかじめ決め、共通認識を持っておくことで、災害時の共助は実現できる」と強調する。
ただ、人口の少ない地域だからこそ可能な取り組みともいえる。住民同士のつながりの希薄化がいっそう進む都市部で、共助を成り立たせるのは一筋縄ではいかない。
■「まずはコミュニティーに所属を」
150万人都市の神戸市では昭和60年、ほぼ小学校単位で「自主防災推進協議会」を結成した。だが、「防災意識の啓発といった側面が強く、救出や避難誘導といった実動組織としての位置づけが弱かった」(市消防局の担当者)ため、平成7年の阪神大震災では組織的な活動ができない地域もあった。その教訓から震災後、全市をカバーする192組織の「防災福祉コミュニティ」に再編成。組織ごとに防災・避難訓練を定期的に実施し、「顔の見える関係」の維持に努める。
三谷によると、都市部でも地方でも共助を成り立たせるには、「単位は小さくてもいい。地域や会社といった所属するコミュニティーを持つことが大切だ」と強調する。さらにメンバーの所属する複数のコミュニティーを結び付け、助け合いの関係を広げていくことも重要だとしている。
「防災意識が低い人のリテラシー(活用力)を高めながら、(コミュニティーの)全員が意識を改めていく。共助を実現するには地道な作業しかない」(敬称略)