現役最後の試合を終え、近大の山田監督（左）と握手を交わす古川＝東京・夢の島公園アーチェリー場

　アーチェリーの古川高晴（40）＝青森市出身、青森東－近大出、近大職＝が26日、現役最後の試合として臨んだ全日本選手権に敗れ、25年の競技生活に別れを告げた。8強入りを目前に決勝ラウンド2回戦で敗退したが、会場となった東京・夢の島公園アーチェリー場では、ねぎらいの大きな拍手を受け、「たくさんの人に応援して、支えてもらった。温かい拍手に本当に気持ちが温かくなった」と目を潤ませた。 　「日本のメディアや応援してくれた方々、ほかの選手たちがいる場を最後にしたい」と引退試合に選んだ全日本選手権。予選を6位で通過し、決勝ラウンド1回戦は競り合いを制した。2回戦は4－6とわずかに及ばなかったが、25年の思いを乗せた最後の1射は満点の10点を射抜いた。 　近大入学時から20年以上古川を指導した同大洋弓部の山田秀明監督（73）は、予選から付きっきりでサポート。矢を射るたびに「強く大きく」と声をかけ、背中を押した。試合後は涙を流しながら「長いことご苦労さん」と古川と握手を交わし、「よく頑張った。アーチェリー界に貢献してくれた」とたたえた。 　「古川頑張れ！」と声援が飛んだ観客の中には、高校時代に指導した手塚義浩さん（63）＝県アーチェリー協会会長＝の姿も。最後の試合を見たい－と現地に駆け付け、「古川がみんなに愛されていると感じることができて、うれしい」と語った。 　自他ともに認める「努力の虫」。コツコツと技を磨き、五輪出場は2004年のアテネ大会から今夏のパリ大会まで、日本選手最多に並ぶ6大会連続出場を果たした。12年のロンドン大会は個人で銀、21年の東京大会では団体、個人ともに銅メダルを獲得。日本アーチェリー界を長年けん引してきた古川に、五輪メダリストの山本博さん（61）は「立派な選手」とねぎらった。 　「成長し続けることができた25年間だった」と振り返った競技生活は一区切り。今後は指導者としての歩みを始める。「ただ技術を教えるだけではなく、選手の気持ちに寄り添うことが大切」。自身が果たせなかった五輪金メダルの夢実現に向け、後輩たちを全力でサポートしていく。