妻は認知症、次男は知的障害…財産約1億円、85歳男性が「約5,000万円の自宅」を“長男”に託した主な「2つの理由」【税理士が解説】
認知症の影響を考慮した「家族信託」のすすめ
「家族信託? 初めて聞きました」と真剣に話を聞いてくれる山崎さん。 「家族信託とは、家族の誰かに自分の財産の管理を任せるしくみです。財産をスムーズに家族へ引き継ぐ準備にも活用されます。 山崎さんのご家庭の場合、奥様に、金融資産のうち半分である2,500万円を遺言書で相続させると、次に奥様が亡くなった時に2,500万円のうち使いきれずに残った財産があると、また遺産分割協議の問題が出てきます。奥様が遺言書を書くことができればいいのですが、既に認知症になってしまっていると遺言書の作成はできません」 「自分の名前を書くのも怪しい状況です……」 「そうですか、やはり遺言書の作成は難しそうですね。それであれば、家族信託をしましょう。家族信託をすることで、2,500万円については、管理を長男さんにお願いできます。長男さんが管理をしますが、実際にそのお金を使えるのは、当初は山崎さん自身、山崎さんが亡くなった後は、奥様、奥様が亡くなった後は、長男さんと次男さんで折半するという信託契約を結んでおくことができます」 「信託契約を結べば、妻が遺言書を書かなくても、私が将来の財産の行き先を決めておけるのですね?」 「そうです。次男さんに相続させる予定の2,500万円についても、管理を長男さんにお願いする目的で家族信託をすると安心だと思います。長男さんに相続させる予定の不動産に関しては遺言書を書いて、それ以外の奥様と次男さんに相続させる予定の金融資産については、家族信託を結んでおくといいと思います」 「なるほど。そんな手があるのですね。まずは長男がどう思っているのか相談してみます」 相談前は悩んでいる様子だった山崎さんは、やるべきことが明らかになり、すっかりやる気に満ちた表情に変わりました。 山崎さんは、すぐに今回の話を長男さんと共有し、長男さんも賛成してくれたことから、すぐに公正証書遺言と家族信託の契約書作成に取り掛かりました。
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