「どうして日本にはGAFAが生まれないのか?」注目の東工大学長が指摘する「ダサすぎる」日本の現状
22年11月に「女子枠の設置」を打ち出して話題をさらったのが、理系大学の最高峰・東京工業大学。同大の益一哉学長は「この国の失われた30年が作り出された原因」の一つに女性活躍の欠如があったと指摘します。 【画像】日本人は「優れていない」のか?グラフで確認 『「いま女子枠を設置しないと、30年はおろかもう10年失う」東工大・益学長が指摘する「この国の崖っぷちっぷり」』に続き、「女性を優遇すること」の本質を伺います。
女性を優遇することで男性に不平等になるのではないかという声に、どう答えるか
――優遇してでも女性を増やす必要がある点は理解しました。しかし、女子枠を増やすと、今度は男性不平等だと言われませんか? 確かに同じ試験なら男性不平等です。女子枠は一般入試である筆記試験には適用していません。 一般入試では男女にかかわらず、同じ評価基準で合否を決めます。一方、総合型選抜と学校推薦型選抜に設けた女子枠は、同じ選抜の一般枠とは別の評価基準を定めた試験を行います。 日本では、私立だけでなく国立大学でも「総合型選抜」を実施しています。これまでの東工大の入試では、一般的な筆記試験で入学するのは定員1000人のうち900人。ほか100人を選抜する総合型選抜や学校推薦型選抜では、学院*によって方法は異なりますが、共通テスト、調査書、面接、課題などで選抜します。 (編集部注*東工大は学部と大学院を統一したため、他大で「学部」に該当する分類をこう呼称する) よくAO入試でラクして入学などと揶揄されますが、2021年の本学追跡調査で入試成績、入学後成績、卒業時成績が相関を持たないことがわかっています。東工大はどのような試験を行ってもきちんとできる学生を選べているということです。これはつまり、入試の成績よりも、入学後にモチベーションを保ち続けることが大事ということです。どのような選抜であれ、入学後に本学で学んでいける能力のある学生しか入れません、ご心配なく、というのが私たちの結論です。 ――選抜時の平等性は担保されているのでしょうか? みんな勘違いするんですよ、同じ試験を受け、成績が悪くても女子を入学させるのかと。もちろん違います、総合型選抜の一般枠と女子枠では選抜の方法が違うんです。 たとえば野球チームを作るときを考えましょう。100m走が速い順に集めるのも一つのやり方です。速いということは体力もあるでしょう。でも野球チームですから、投守走いろいろな能力を多様に集めて初めてチームが強くなりますよね。いまの大学入試は100m走だけで入学してくるようなもので、むしろ総合選抜のほうがバッティングや持久力など多様な尺度で入ってきます。どちらがチームを強くするかは明白です。 そもそも、偏差値信仰に陥っているのは日本くらいです。私に言わせれば、失礼ながらダサいことこの上ない。韓国だって中国だって大学を入学者の偏差値で評価したりはしません。 アメリカも、ハーバードはいい学生が入るからいいのではなく、ハーバードがいいからいい学生が入るのです。ハーバードが何をやっているかが評価の対象なのに、日本はまったく逆のことをやっている。また、大学卒業の成績がいいから社会で成功するわけでもありません。社会に出てからもモチベーションを持ち続ける人材に育てることが重要で、18歳時点の一面的な尺度では測れません。