イチからわかるプルサーマル発電
電力4社が7月8日に原発の再稼働を申請しましたが、そのうち関西電力(高浜3、4号機)と四国電力(伊方3号機)は「プルサーマル発電」を前提に申請しました。関電高浜原発(福井県)には6月下旬、プルサーマル発電に使うための「MOX燃料」がフランスから輸送船で届いています。プルサーマル発電とは何でしょうか。 [図表] 原子力発電の割合はどれくらい?
核燃料の再利用
プルサーマル発電とは、プルトニウムを一般的な原子炉で燃やす発電方法のことです。通常、原発ではウランを燃料として使いますが、プルサーマル発電では、プルトニウムとウランを混ぜたMOX(混合酸化物)燃料を使います。プルサーマルという名称は、プルトニウムの「プル」とサーマル・ニュートロン・リアクター(熱中性子炉)の「サーマル」を合わせた和製英語です。 では、なぜ通常と違う燃料で発電するのでしょうか。各電力会社は、燃やせないウランを有効活用したり、核兵器にもなりうるプルトニウムを平和利用したりすることを、その理由として挙げています。 MOX燃料は、原子炉で使い終えた核燃料から、燃え残ったウランや新たにできたプルトニウムなどを取り出してつくります。こうして燃料を繰り返して使う仕組みを「核燃料サイクル」といいます。
「もんじゅ」の挫折でプルサーマル発電に注目
当初はこのMOX燃料を、消費した以上の燃料を生み出すといわれる「高速増殖炉」で使う予定でした。ところが高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)では事故が相次ぎ、この方法が実現する可能性が低くなってきたため、もう1つの再利用方法としてプルサーマル発電が浮上してきたのです。 プルサーマル発電は、国内では2009年に九州電力玄海原子力発電所で始まりました。その後、東京電力福島第一原発、四国電力伊方原発、関西電力高浜原発でも始まり、ほかの原発でも導入される予定でした。 しかし、福島第一は2011年3月の事故で、伊方と高浜は定期検査で運転を停止し、ほかの原発への導入は見送られています。また、使用済み核燃料からウランとプルトニウムを取り出すことになっている六ヶ所村再処理工場(青森県)は稼働の目処がたたず、現在は高い費用をかけてフランスやイギリスに使用済み燃料を送って再処理を行っているのが現状です。