対策進まぬ高齢者の住まい問題。福祉の視点から居住支援協議会の立ち上げに奮闘、民間連携の好例に 愛媛県宇和島市
「居住支援協議会は不要」と結論された、その背景とは
それでも住まいを必要としている人たちの住宅確保、生活の安定のためには、他部署や不動産会社など民間団体との連携が不可欠です。そこで岩村さんと大江さんは、2021年に市の社会福祉協議会とともに、居住支援を行う団体の連携を図る組織「居住支援協議会」を宇和島市でもつくれないかと考え、市役所の各部署に居住支援の実態を調査しました。 果たしてその結果は……市民は住まいの問題を市役所に相談しようとはあまり考えないのか、相談件数も少なく、市役所内の各部署では、居住支援協議会設置の必要性をあまり感じていない状況でした。 「しかし、実際の現場では、認知症を発症して生活保護を受けている高齢者や、公営住宅に入居している無職のひとり親家庭など、起因する問題を管轄する部署と、対応する部署がいくつも絡んだ複合的な問題となっているケースも。高齢者福祉課の地域包括支援センターと保護課、建設部の建築住宅課と地域包括支援センターなど、部署をまたいだ支援を要することが多くなっています。 だからこそ相談者が高齢者か、障がいのある人か、ひとり親か、また管轄が厚労省なのか国交省なのか、さらにどちらにも当てはまらないのかによって、市役所内でたらい回しのようになることは避けたい。『住宅(の確保に困っている人)』という括りで支援を協議する場の必要性を強く感じていました。それこそが居住支援協議会ではないかと思ったのです」(岩村さん)
厚労省のプロジェクトを活用し、理解や学びを深める
そこで市役所内外の関係者に連携の重要性を理解してもらうために、岩村さんと大江さんは、厚労省の「高齢者住まい・生活支援伴走支援プロジェクト」(以下、伴走支援プロジェクトまたはプロジェクト)に応募しました。このプロジェクトは、住まいの確保や、その後の生活に支援を必要とする人たちをサポートする団体の連携の場として、居住支援法人協議会を立ち上げようとしている自治体や団体を専門家が応援・アドバイスするというものです。 プロジェクトに手を挙げたことで、2022年12月には研修会を開催。すでに積極的に居住支援に取り組んでいる自治体から講師を招き、宇和島市の各部署の支援に携わる職員のほか、社会福祉協議会、伴走支援チームのメンバーや厚生労働省職員も出席して、居住支援の基礎から学ぶことができたそうです。 「居住支援法人の必要性についての理解が参加者に浸透しつつあるので、継続しながら居住支援協議会立ち上げの機運を高めていけたらと考えています。 研修会以外にも、個々に居住支援法人の補助金や補助制度、不動産会社へのアプローチの方法など、講師の方に居住支援の仕組みづくりのノウハウを教えてもらいながら、居住支援協議会立ち上げに向けて準備を進めているところです」(岩村さん)
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