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大型プロジェクトの大半が当初の予算や期限を守れず、期待していた便益を得られない。成功に導くための賢明なアプローチは「ゆっくり考え、すばやく動く」なのに、多くの人がその逆をしてしまう。それはプロジェクトをとにかく早く始動させたいから。端的な例を見てみよう。『BIG THINGS どデカいことを成し遂げたヤツらはなにをしたのか？』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成してお届けする。 【写真】「仕事速いね！」と言われる人が意識している、たった3つのコツ

「早急に陸軍の省庁を建てろ！」

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1941年7月当時、アメリカ合衆国は第二次世界大戦に参戦していない最後の大国だった。だがこの状態がいつまでも続くとは考えられていなかった。 大統領フランクリン・デラノ・ローズヴェルトは国家緊急事態を宣言し、アメリカの小規模な平時軍を拡大して、ヨーロッパと太平洋地域でのファシズムとの戦いに耐える巨大な軍隊に変えようとしていた。 アメリカ陸軍省は首都ワシントンDCの複数のビルに分散していたが、この状況を鑑み、本部にふさわしい庁舎が早急に必要となった。それは大きな建物でなくてはならない。また直ちに建設されなくてはならない。それが、陸軍建設部門を統括するブレホン・B・サマーヴェル准将の出した結論である。 ブレホン・サマーヴェルは、やると決めたら必ずやり遂げる男だった。彼は技術者で、直近ではニューヨークのラガーディア空港などの大型施設を、想像を絶する速さで建設してきた実績があった。「サマーヴェルは部下たちを週7日間、容赦なく働かせ、ギリギリまで追い込んだ」と、作家のスティーヴ・ヴォーゲルが、ペンタゴンの優れた建設記『ペンタゴンの歴史』(未邦訳)に書いている。 7月17日木曜日の夕方、サマーヴェルは部下たちに一斉命令を出した。 床面積が50万平方フィート(約4万6452平方メートル)──エンパイア・ステート・ビルの約2倍──のオフィスビルを設計せよ。ただし、船舶や戦車の建造資材となるスチールを多用する、高層ビルであってはいけない。 ワシントンDC(コロンビア特別区)は建設用地が不足しているため、ポトマック川を渡ったバージニア州の、最近まで飛行場として使われていた土地を充てる。建物の半分は6か月で完成、稼働させ、全面開業は1年後とする。月曜の朝一で私の机に設計計画を置いておくように、と准将は申し渡した。それが指示のすべてだった。 サマーヴェルの部下たちがすぐに気づいたように、この土地は建設に不向きな氾濫原の湿地だった。彼らはこれに代わる建設用地を血眼で探し、800メートルほど上流に行ったところに、アーリントン国立墓地と川に挟まれた、「アーリントン試験農場」と呼ばれる平地を見つけた。サマーヴェルは建設地の変更を承認した。