シチュー味にきゅうり味……なぜメーカーは「変わり味」商品を出すのか
駄菓子や飲料を中心に変わったフレーバーの商品が増えています。赤城乳業がアイスキャンディーの「ガリガリ君」にシチュー味やモンブラン味を出したり、ペプシコーラがスイカ味やきゅうり味を出したりして、大きな話題を集めました。こうしたメーカーは、一見するとミスマッチにも思える変わった組み合わせの商品をなぜ発売するのか。ブランド・マーケティングに詳しい三菱UFJコンサルティング&リサーチの鈴木ちさ氏に理由を聞きました。
成熟市場での差異化を図る
―――どうしてメーカーは「変わり味」を出すのか? 駄菓子や飲料市場は飽和した状態の「成熟市場」で、ブランドがあまり意味を成さないゾーン。こうした成熟市場では差異化のポイントをどこで作るかがメインテーマになる。 食品業界でどう差異化するかとなった場合、それは基本的には「味」。しかしもう今は味で差別化ができない状態。作り方や素材などのような、「味」の前段階で差異化しようとしている。素材にお金かけたり、価格を高く設定できるものならいいが、駄菓子はコストに乗せられない。飽和した状態で、しかも欲望が充足したような商材では、原価を上げられないし、売り方にコストを載せることもできない。駄菓子や飲料がいい例。そういった時に簡単なのは、フレーバーを変えること。
「脳」にはたらきかける味
―――たとえばガリガリ君は「シチュー」味というかなり異色の組み合わせだが 味を変えることは、それすら今は飽和している。ハバネロみたいなものすごく辛いものを入れるとか味覚を刺激して記憶させるために使えるものは限りがある。 ではその次どうするか。食欲を満たすのが食品だが、欲求の次の段階として「よりおいしい」、そしてその後に残っているものは「脳」を動かすことになる。ガリガリ君のシチュー味が出た時、みんな「どんな味なんだろう」と想像する。人の好奇心、知的欲求を刺激するという策に出ている。味覚というより思考実験といってもいいかもしれない。脳に働きかけていて「よく考えられているな」と感じる。 また、こうした変わり味は話題になる。普通の味なら話題にならない。食べる時もどんな味か検証しようとしている。人間は自分が試したことを人に言いたくなる生き物。そういう人じゃないと、ガリガリ君とか炭酸紅茶には手を出さない。